ハトを飼ってみよう!-ブリード(繁殖)からレースまで、新しいペットの楽しみ方ー  第4章 鳩の購入

ペットを飼うといえば、ワンちゃん、ネコちゃん、ウサギさん・ハムスターといった小動物、またインコや文鳥といったトリさんを思い浮かべる方が多いでしょう。最近では、ヘビやトカゲといった爬虫類を飼いたいという方もいますね。 「でもせっかく動物を飼うなら、人とは少し違ったペットを飼ってみるのも面白いかも…」と思ったあなた、ここでおススメするのは、皆さんおなじみのハトです! 「ハトってあの公園にいる…」と思われた方、実はハトにはたくさんの種類があり、ペットとしてお勧めするのは、由緒正しき血統を持ったレース鳩(伝書鳩)。 元々、ハトは帰巣本能を持っていて、きちんとした手順を踏んで飼育すれば、自分の家(鳩舎)へ帰ってきますし、また、自身でブリード(作出)したヒナを鍛え上げることによって、ピジョンスポーツ(鳩レース)にも参加できます。 ピジョンスポーツは世界中で盛んに行われており、海外の大きなレースで好成績を挙げたハトには、種鳩(競馬でいえば種牡馬)として、1羽数千万円の値段が付くことも! そんな魅力満載のハト飼育。ここからはハトを飼う前の準備について、お話しします。

●ハトの導入方法

ハト小屋(鳩舎)、ハト用具、餌などの準備ができたら、いよいよハトを購入しましょう。

ハトを飼う前に、ひとつ大事な提言を。公園や山にいるドバトを捕まえて飼うのはやめておきましょう。ドバトは感染症予防の投薬も行っておらず、病気を持っている可能性があります。ここで推奨するのは、きちんとした血統書を持ったレース鳩。後日、レース鳩を導入した際、ドバトから病気を移されるケースもあります。

ドバトとレース鳩の違いは、一目瞭然。レース鳩には個体証明である脚環(足についている輪っか)があります。必ず血統書付きのレース鳩を購入するようにしましょう。

さて、ハトの購入ですが、一般的なペットショップでは、ハトを販売しているお店は少ないと思います。ではどうすればよいでしょうか?

レース鳩を買うには、インターネットなどで鳩を取り扱っている業者さんを探し、購入する方法があります。また、将来的に鳩レースを楽しみたい方ならば、当協会に入会すると毎月、機関誌「レース鳩」が送られてきますので、掲載されている広告業者からも購入できます。

全国でハトを販売している方々は、鳩質の改良など、実に熱心にハトを研究しています。どの業者さんから買っても、それなりのハトを取り揃えることができます。

ハッキリ言って、価格はピンキリ。1羽数百万円するものから数千円で買えるハトもいます。要は血統次第ですが、最初は、1羽1万円以下のハトで十分でしょう。

もう一つは、近隣でハトを飼っている方から譲って頂く方法があります。後々、鳩レースを行う場合、お住いの地域の地理的特性により、その地域に合った血統があります。

鳩レースの愛好家は、これを「地元の飛び筋」と呼びますが、これは地域によって千差万別。実際に、その地域で鳩レースを行っている方からお話を聞いて、譲って頂くのが確実でしょう。

ただし、ハトを譲って頂く場合、信頼のおける人物からでなければ、トラブルの元となるので気を付けましょう。

レース鳩には、種鳩(繁殖が目的)と選手鳩(レース参加が目的)の2種類がありますが、購入するハトは基本的に種鳩となります。ハトは屋外に放しても自分の小屋に戻ってきますが、これはあくまでも、ヒナの時から馴致(鳩舎の場所に慣れさせる)や四方訓練(近くの場所から鳩舎への方向を判定させる)を行ったハトだからできること。種鳩をいきなり放してしまうと、帰ってこなくなるので気を付けましょう。

またヒナ鳩を譲って頂いた場合、脚環がついているか、投薬を行っているかを確認する必要があります。

●ハトの種類

初めてハトを飼う時は、どんなハトを購入したらよいか迷う方が多いと思います。健康でレース鳩としても能力が高いハトが理想でしょうが、本当に良いハト、能力の高いヒナを産むハトをひと目見て判断するのは、相当なベテラン鳩舎でも難しいものです。

そこで、最初に飼うハトを選ぶ基準としては、「きれいなハト、かわいいハト」といった見た目で気に入ったハトで良いと思います。あえて注意する点を挙げるとすれば、ハトの健康状態。「動作がきびきびしている。羽毛に艶がある。生気に満ちた感じがする」といった部分を見ましょう。

愛鳩家はよく「手持ちの良いハト」といいますが、実際にハトを手に持ってみた時、「羽毛がシルクタッチ。筋肉に弾力がある。手に軽く感じる」といったハトが良いといわれます。これは感覚的なものですので、自分の直感を信じるのが良いかもしれません。

また、ハトには様々な羽色(うしょく)があります。羽色とは、読んで字のごとく、羽根の色のことです。これはアルファベットで表記されることが多く、多くのハトはB(灰)やBC(灰胡麻)に分類されます。一般的の方に人気があるのは、見た目がきれいなW(純白)やR(栗色)、珍しいところでは、3色が混在するM(モザイク)やG(グリズル)などがあります。また、羽色の表記の後にW(刺し)と記載があるのは、尾羽に白色の羽根が生えているという意味、P(パイド)と記載があるのは、首や顔に白い斑点があるという意味です。主な羽色は以下の表に記載しますので、ご参照ください。

名称・記号 説明
B(Blue・灰) 全身灰色で、2、3本の黒条の線がある。
BC(Bluechequer・灰胡麻) 灰色の全身基調の中に、黒色の斑点がある。
BLK(Black・黒) 全身が黒色
BLKC(Blackchequer・黒胡麻) 黒色の中に灰色の斑点がある。
R(Red・栗) 全身が栗色で、主翼羽根・尾翼は灰栗色
RC(Redchequer・栗胡麻) 栗色がかった灰色の中に、栗色の斑点がある。
S(Silver・灰栗) 栗の色合いを持つ灰色。翼に栗色の線がある。
M(Mozaic・雑斑) 3色以上混在。
W(white・純白) 全身が白色。

羽色の例

B(灰)

BC(灰胡麻)
BLKC(黒胡麻)
G(グリズル)
S(灰栗)
BCW(灰胡麻刺)
(*クリックすると画像が大きくなります)

●血統(系統)について

さて、レース鳩はそれぞれが血統を持ち、そこには様々な系統があります。血統書(系統書)とは「どんなハトから生まれたのか。先祖にはどういったハトがいるのか。そのハトや一族はどのようなレース成績を残したのか」を記載した、いわば履歴書や戸籍謄本のようなものです。これを見れば「そのハトがどんな系統か、先祖に優秀なレース鳩がいるかどうか」が一目瞭然です。

このハトの系統には様々な種類があり、大きく分けると「在来系」(戦前から日本で飼われていたハト)、「輸入系」(戦後に外国から輸入されたハト)の2種類。

「在来系」は明治時代末期から大正時代にかけて、日本陸軍の手によって軍用ハトとして輸入されたのが始まり。その子孫が民間に流れたことや神戸や横浜といった港町で船員により持ち込まれたハトなどが組み合わさり、様々な系統が作り上げられました。

「輸入系」とはアメリカやヨーロッパ、特に鳩レースの本場であるベルギーやイギリス、オランダ、ドイツなどから優秀なレース鳩が輸入され、現在もその傾向は続いています。

それぞれに多数の系統があり、ここで全てを紹介することはできませんが、原型として代表的な系統を、下記にいくつか記載しておきます。

★在来系

今西系=今西万次郎氏が、昭和12年に作出した「今西号」が源。帰巣性が高く、長距離レースに力を発揮する。

南部系=盛岡南部藩43代当主・南部利敦公が欧州外遊時にベルギーでレース鳩を買いつけたことが起源。現在では、白雪南部系、五十島南部系など様々に分派している。

勢山系=勢山庄太郎氏を系統確立者とする系統で、中・長距離レースを得意とし、特に悪天候に強かったとされる。

岩田系=愛知県名古屋の岩田孝七・誠三兄弟によって、確立された系統。オペル系、シオン系など戦後の輸入鳩が基礎鳩となっていることから、「岩田輸入系」と呼ばれることもある。長距離レース向きの系統とされている。

★輸入系

ヤンセン系(ベルギー)=ベルギーの片田舎・アーレンドンクに住むヤンセン兄弟が確立した系統。その圧倒的なスピード能力から、世界的に最も有名な系統といえる。距離特性は短・中距離レースだが、様々な長距離レースでも結果を残している。
ファンブリアーナ系(ベルギー)=ベルギー西部のアールベーケに生まれた、アンドレ・ファンブリアーナ氏が確立した系統。インターナショナルレース4回制覇など、ベルギー鳩界でも、偉大な競翔家の一人。特性としては、悪天候に強く長距離レースを得意としている。
シオン系(フランス)=フランスの繊維会社の経営者・ポール・シオン氏が、その財力で19世紀末の有名鳩舎から多数の俊鳩を導入したのが基盤。特性は、天候や距離を問わないオールラウンダーといわれる。
ゴードン系(アメリカ)=「長距離レースを当日に帰す」ことを目標に設定し、モーリス・ゴードン氏が確立した系統。特性としては、長距離レースを得意としながら、スピード性も兼ね備えている。

(第5章へ続く)

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