趣味のピジョンスポーツ 第12回「賛助会員から連合会員へ、異色の経歴」 谷口英司鳩舎

分有鳩舎で鳩レースを楽しむ谷口英司鳩舎
今回は、京都府にお住いの谷口英司鳩舎(61歳)。昨年、八郷・伊賀のオータムカップ200Kでそれぞれ第8位、第9位入賞を含め、4年間で6度の国際委託鳩舎シングル入賞を獲得しています。当初は賛助会員だった谷口さんは現在、ニュー近畿連盟・京都雅連合会へ移籍して鳩レースを楽しんでいるとのこと。賛助会員から連合会員へというレアな移り変わり、そのピジョンライフとは…。

「今、私がピジョンライフをエンジョイできているのは、伊賀鳩舎のスタッフさんと鳩飼育でお世話になっている石田さんのおかげ。本当に感謝しています」。

こう話すのは、元・賛助会員で現在はニュー近畿連盟・京都雅連合会に所属して鳩レースを楽しんでいる谷口英司鳩舎。これまで、鳩飼育の中断と再開を繰り返したという、そのピジョンライフを振り返ってみましょう。

元々、子供の頃から甲斐犬、フィンチ系(文鳥、ジュウシマツといった雀型の小鳥類)、錦鯉といった様々な動物に囲まれた家庭環境だったという谷口さん。自身も高級フィンチをブリードし、近くの小鳥屋へ卸してお小遣い稼ぎをしていたとか。鳩は中学1年生の時にドバト2羽を飼育し始めたそうです。その後、16歳の時、父親が知り合いからレース鳩を譲ってもらったことをきっかけに、地元の大阪守口連合会へ入会。本格的に鳩レースの道を歩み始めます。血統書もない種鳩4羽で選手鳩20羽を飼育していたそうですが、初参加となった200Kレースで連合会3位(ジュニア優勝)の結果を残したことで、一気に鳩レースにのめりこみました。

「当時の成績は600K当日、700K翌日、長万部1000K後日といったところ。学生なので、優秀な血統の鳩は手に入らず、大人に勝つのは難しかったですね。でも、帰還した鳩からゴム輪を外して、時計のハンドルをカシャンと回す時のドキドキ感が溜まらなかった」(谷口さん)。

大学卒業後、就職と共に転勤族となったため、鳩飼育を中断。「いずれ必ず再開する」と考えていたそうですが、仕事が多忙を極める中、徐々に鳩レースへの思いも薄れていきます。

そんなある日のこと、インターネットで鳩レースのブログを見たことを機に、鳩への思いが、再び沸き上がってきました。レース鳩に関する様々なHPを検索する内、すぐにでも再開したい気持ちにかられましたが、仕事との兼ね合いもあります。そこで「定年後の鳩三昧生活」を目標に、昨今の主流系統や日本鳩レース界の近況といった情報収集に励む他、58歳の時、自宅の庭にDIYで半坪鳩舎を建築。種鳩4ペアを購入し、レース再開へ準備を始めます。

そして定年を2年後に控えた2016年、自宅が住宅街のため、近隣への迷惑も考え、舎外が必要ない委託レースでのみと決め、賛助会員として再び鳩レースの世界へ。満を持しての復活でした。

「再開の初シーズンで八郷は500K80位、伊賀は菊花賞400K第8位に入賞できました。まあ、ビギナーズラックでしょう」。

順風満帆なレース再開と思いきや、その直後、思わぬことから再びレース中断の危機を迎えます。なんと近隣住民から強烈な苦情を受け、種鳩の全鳩処分まで迫られたのです。

恐れていたことが現実となり、泣く泣く愛鳩達を手放すことになった谷口さんは、「厳しい住宅環境での鳩飼育の難しさ」を痛感したといいます。しかし「捨てる神あれば拾う神」あり。ひょんなことから鳩レース継続への道が照らされました。

「伊賀鳩舎から16年度秋200K後日帰りの連絡があり、鳩を引き取りに行ったんです。その時、中断の事情を話したところ、伊賀鳩舎のスタッフの方から私の自宅近くに鳩舎を構える石田精彦さん(京都雅)をご紹介頂きました。石田さんは長距離レース総合優勝2回の強豪鳩舎。後日、鳩舎を訪問して事情を詳しくお話したところ、種鳩鳩舎の一部を使用させて頂けることになり、それから再再開まではトントン拍子。人と人との絆によって、今も鳩レースを続けることができています。本当に皆さんの支援には感謝しており、とても感激しています」。

石田鳩舎の協力の下、1年間のブランクを経て、18年より両国際委託鳩舎へ委託を再開。現地で観戦した「伊賀オータムカップ200K」では、なんと第2位に入賞しました。19年度には「伊賀国際サクセス200K第7位」、20年度は「八郷オータムカップ200K第8位」、「伊賀オータムカップ200K第9位」と毎年、好成績を残しています。

「種鳩は石田さんに作出して頂いた総合優勝鳩のラインとオークションでの導入が中心。八郷へは関東地域で実績のある長距離スピード系、伊賀へは山越えのために地元の粘りの筋を主力に考えています。多少は結果が出ましたが満足しておらず、配合に関してはまだまだ勉強不足。でも1年間かけて配合を考え、手を尽くし育てたヒナを送り出し、1年後にその結果をレースで確認する過程は、本当に楽しいものですよ」。

さて様々な方々の助力で、鳩レースを再再開できた谷口さんは、今年からお世話になっている石田鳩舎が所属する京都雅連合会へ移籍。賛助会員では難しい「鳩仲間との交流を求めて」とのことですが、苦労を重ねても諦めないその鳩レースに対する熱い思いとは…。

「鳩レースは種鳩の選定から配合、育成管理、調教、レースまで、全てのプロセスを自分で完結できる究極のスポーツだと思います。また国際委託鳩舎はベテランも新米も関係なく、同一条件で全国の会員さんと争えます。関西在住の私にとっては、八郷シリーズで東日本CH900Kレース(放鳩地・北海道汐見)に参加できるのも大きな魅力です。今は容易に自宅で鳩を飼える環境にある人は少ないでしょう。そのため、委託レースの需要は高いと思います。ぜひとも〈国際委託鳩舎の委託鳩オーナー制度〉や〈委託鳩舎の拡充・新たな設立〉といった様々なシステム構築を協会主導でお願いしたいです!」。

連合会員から賛助会員、そして連合会員へと、紆余曲折を経て鳩レースを楽しんでいる谷口さん。これからもその鳩への情熱を持ち続けてもらいたいものですね。

谷口さんの自宅は住宅街の真ん中
石田精彦鳩舎(写真左)の協力で、現在も鳩レースを継続中!

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