ハトを飼ってみよう!-ブリード(繁殖)からレースまで、新しいペットの楽しみ方ー  第3章 鳩を飼う前に その2(鳩用具・エサ)

ペットを飼うといえば、ワンちゃん、ネコちゃん、ウサギさん・ハムスターといった小動物、またインコや文鳥といったトリさんを思い浮かべる方が多いでしょう。最近では、ヘビやトカゲといった爬虫類を飼いたいという方もいますね。 「でもせっかく動物を飼うなら、人とは少し違ったペットを飼ってみるのも面白いかも…」と思ったあなた、ここでおススメするのは、皆さんおなじみのハトです! 「ハトってあの公園にいる…」と思われた方、実はハトにはたくさんの種類があり、ペットとしてお勧めするのは、由緒正しき血統を持ったレース鳩(伝書鳩)。 元々、ハトは帰巣本能を持っていて、きちんとした手順を踏んで飼育すれば、自分の家(鳩舎)へ帰ってきますし、また、自身でブリード(作出)したヒナを鍛え上げることによって、ピジョンスポーツ(鳩レース)にも参加できます。 ピジョンスポーツは世界中で盛んに行われており、海外の大きなレースで好成績を挙げたハトには、種鳩(競馬でいえば種牡馬)として、1羽数千万円の値段が付くことも! そんな魅力満載のハト飼育。ここからはハトを飼う前の準備について、お話しします。
鳩具の棚

●鳩具の準備

ハトのお家(鳩舎)が完成した後は、ハトを世話する道具を準備しなければなりません。
ここでは鳩を飼うために必要な最低限の備品を紹介します。
まず、ハトが水を飲むための「飲水器」(写真1)。こちらは0.5リットルから9.5リットルまでと、様々な大きさのものがありますが、2羽の飼育ならば1リットル程度で十分でしょう。値段は1個600円程度から。

飲水器(写真1)

また餌を入れる「エサ箱」も必要です。これも木製(写真2)、プラスチック製、ステンレス製、さらには自動給餌器まで色々な種類がありますが、基本は木製でOK。こちらは60センチメートルの商品が約3000円で購入できます。またプラスチック製ならば、同じ大きさで約1000円程度と、コストを抑えることもできます。最初、少羽数のハトを飼う場合は、小さな「エサ入れ」(300円程度)でも十分かもしれません。

餌箱(写真2)

次は掃除道具。こちらは「フンカキ」と言われるものです。名前の通り、床の落ちたハトの糞を掃除する道具で、様々な形状・大きさのものがあります。鳩舎を清潔に保つことはハトの健康にとって最も大事なこと。ハトを飼っている方は毎日、鳩舎の掃除を欠かしません。ハトの糞は床に張り付くので、床を掻いて掃除することから「フンカキ」という名前がついています。
スタンダードなものは柄がついた鎌のような形(写真3)で、お値段は約500円からとなっています。人が立って入れるような大型鳩舎の場合、長さが1メートル以上あり、立ったまま掃除できる物もありますよ(お値段は約3000円程度)。また、集めた糞を捨てるため、「チリトリ」もあった方が良いでしょう。こちらは市販物で大丈夫です。

フンカキ(写真3)

あと、卵を産んだ時の「巣皿」も必要です。鳥が卵を温めている姿は見覚えがありますね。そのための道具です。紙製、藁製、プラスチック製、石膏製など、さまざまな種類がありますが、ここでは丈夫な石膏製(写真4・一つ500円程度)をお勧めします。こちらは大事なヒナを育てるためにも必要ですから、壊れにくい製品を準備しましょう。

巣皿(写真4・中は偽卵)

また、第2章で紹介した鳩舎の中に設置する「止まり木」(写真5・1個300円程度)や出入口に必要な「トラップ」(150円程度)も、鳩業者さんで販売しています。
この他、個々のペア(雄雌)を隔離してヒナを産ませる「巣箱」(写真6、約7000円から)・「ゲージ」(写真7、2ペア用で約25000円から)や鳩レースの訓練や移動で使う「放鳩カゴ・バスケット」(写真8・9、2羽用で約7000円)、レース鳩の脚に付ける個体証明に必要な「脚環・私製環」(写真10、日本鳩レース協会発行DA環で1個140円)などもありますが、こちらは鳩レースを行うようになってから、準備すれば良いでしょう。

の他の鳩具

止まり木(写真5)

巣箱(写真6)
ケージ(写真7)
放鳩カゴ(写真8)
バスケット(写真9)
脚環(左)・私製環(右)写真10
(*クリックすると画像が大きくなります)


●エサの準備

飼うための道具が準備できたら、鳩に与える餌が必要になりますね。ハトは鳥類の中では比較的、体が丈夫。飼育は容易な鳥です。餌には主食の「穀物飼料」と副食の「鉱物飼料」があります。
主食の「穀物飼料」は便宜上、主に大粒と小粒に分けられます。大粒飼料はトウモロコシ、えんどう豆、そら豆、大豆、ラッカセイなど、小粒飼料はマイロ、麻の実、サフラワー、菜種などとなっており、その他には、小麦、玄米、大麦などがあります。
鳩レースのテクニックの一つに、たんぱく源としての豆類、脂肪源としての麻の実、サフラワー、菜種といったように、レースマンはそれぞれを微妙な混合率で、考えながら与えています。人間のアスリートが栄養士に計算してもらった食事をするのと同じですね。
しかし、飼育当初はそこまでして与える必要はないので、各飼料を混合している「配合飼料」(写真11・1㎏で500円程度)が便利。一般的に様々な種類の製品が市販されていますので、そちらで購入しましょう。

穀物飼料(配合飼料・写真11)

また、餌の与え方には「まき餌」、「置き餌」といった2つの方法があります。「まき餌」は鳩舎の床に直接、餌をまいて食べさせるやり方で、「置き餌」はエサ箱に入れておいておくやり方。
前者は、レースマンが鳩の餌を食べる様子を観察して、レースに参加する各選手鳩(繁殖のためのハトは種鳩と呼びます)のコンディションを確認するのに有効ですが、基本的には「置き餌」で対応しましょう。
与える量ですが、これはハトの状態によって変わります。通常時の目安としては、1回で与えた量を少し残す程度がベスト。鳩レースを行っている場合、ハトの運動量が多いため、これを朝と夕方の1日2回に分けて与えていますが、通常は1日1回で大丈夫です。
さて副食の「鉱物飼料」ですが、この言葉に聞き覚えのない方も多いでしょう。「鉱物飼料」とは、天然の無機物を飼料化したもので、代表的なものには「塩土」、「焼砂」などがあります。簡単に言うと、穀物を胃の中で細かく砕くために必要な石や砂のこと。
鳥には歯がないため、主食の穀物をかみ砕くことができないため、まず「そのう」という部分(鳥類が持つ食道の一部)に餌を蓄え、柔らかくします。柔らかくなった穀物を少しずつ胃に送り、消化するために細かく砕きます。この時、小さな石(砂)を食べて、細かく砕く手助けになるようにしています。鳥類にとって生きるため、絶対に必要なものなのです。また「鉱物飼料」には、カルシウムやミネラル、リン、鉄分といった健康を保つ働きを助ける成分が多く含まれています。
代表的なのが「塩土」(写真12・200円程度)で、塩、赤土、ボレー粉を混ぜて硫酸カルシウムで固めたもの。鳩舎の中に置いておくだけでOKですので、必ず購入して与えるようにしましょう。

鉱物飼料(写真12・塩土)

なお、以上にご紹介した鳩用具・餌は、いずれもインターネットのサイトで購入可能です。もし購入先がわからないという場合は、当協会で販売している用具もありますので、ご連絡ください。

(第4章へ続く)

 

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