連載2-55、悪天候の克服性 その二
さて前回の続きじゃが、ゴードン系の鳩はイギリスのオスマン氏から4羽の種鳩を導入したのが源鳩じゃ。
それに当時、ベルギーの優秀鳩の有名なコレクターであったカーチス氏の鳩舎で、長年ロフトマネージャーとして働いておったといわれるビュッター氏のグルネー系を主流とする血統の鳩が交配され、最盛期のゴードン系ができあがったとされておる。その各々の血統を吟味してみると、いずれも悪天候の克服能力を持っていると定評のある血統であったことが判明するのじゃ。
この事実は、わしらが今後も十分に承知しておくべきことであろうのう。
また前回に述べたローガン系の鳩として、アメリカ東部のボルチモアのオペル氏の系統は、主流をマッコイ氏によって引き継がれたが、同氏の鳩は分速800ヤード(730メートル)台のレースでは優勝するが、好天候のレースでは全くダメだといわれておった。
このように様々な面から考えていくと、日本のような山岳地帯の地形のコースを飛ぶレースにおいては、悪天候の克服性に強い血統にも注意を払い、その血統を自鳩舎の系統に活用する配慮が大切ではないかのう。
なるほど、今日のレースはスピードレースが主流じゃ。最近の天気予報は非常に技術が発達しており、的中率も高くなって、おおむね快晴の日にレース開催できることは確かじゃ。
しかし、万が一にも悪天候に放鳩せざえるをえないような場合、それが長距離であればあるほど、長年、愛育し訓練して仕上げてきた好成績の選手鳩を脆くも失踪させてしまうという、苦い経験を味わわされることも、充分ご承知であろう。スピードのある鳩は、残念ながら鋭利な刃物のように脆く、思わぬところで失踪するものじゃ。
では悪天候に強い血統で今日のスピードレースを戦った時、晴天の日のレースでは上位入賞はまず望めないとなると、果たしてどうすれば良いかのう…。
「それならば、スピード性のある系統と悪天候の克服性に強い系統を交配すれば良いではないか」という意見もあると思うが、世の中はそう簡単にいかぬ。これを試したところで、おのずと結果は「どっちつかずの性能」になってしまい、役に立たないことが多いのじゃ。この問題はレース鳩の作出において、最も基礎的な面であり、最も関心の大きいところでもあるのう。
では次回、この点をさらに深く、考えていくとするかのう…。
(この稿、続く)