連載2-3、後代検定のポイント その二

このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。(イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ)

種鳩の強健性をチェックした後は、その親から作出されたヒナの巣立ちまでの状態を確認せねばならん。

孵化後、数日経つとそのヒナの発育状況が明らかになってくる。順調に発育しているかどうかは、まずヒナの体の大きい小さいを見ることじゃ。親鳩の性格によっては、第一卵を産卵後、すぐに抱卵を始めるものもいる。そうなると、孵化する日も変わってくるし、ヒナの大小が出てくるのじゃ。そこで第一卵を産卵したら、速やかに偽卵と交換して第二卵を産む日の午前中に再度、元のように第一卵を巣に戻し、偽卵を取り上げる必要がある。こうすれば、孵化の日時も揃うし、ヒナも大小もできないはずじゃ。問題なのは、孵化が同時であるのにヒナの大小が出る場合じゃ。要は発育が遅いということじゃが、そのようなヒナは肛門の周囲も汚れており、巣皿も柔らかい糞のため、ベトベトになっていることが多い。また産毛も蒸れたようになっている。このようなヒナを作る種鳩は困る。

ヒナが強健であるかどうか、最もわかりやすい判別方法は糞を見ることじゃ。シュークリームを小さくしたような形のしっかりした糞、勢いよく巣皿から外に脱糞した時にも、有形の状態であることが望ましい。水便が続くようでは、駄目とみるべきじゃ。

次に観察するべき点は、産毛の色艶と密生度じゃな。これは系統によっていろいろ異なるが、健康なヒナは産毛が多く艶も良い。昔、有名なイギリスの競翔家、故・ビクター・ロビンソン氏が飛ばし「第一回キングスカップ」を獲得した『チャンピオン・ウエストン・ラド号』について、次のようなエピソードがある。ロビンソン氏は、友人から選手鳩を貰うことになり、その鳩舎を訪れたそうじゃ。その際、彼は綿密な黄色い産毛で覆われていたヒナを高く評価して選んだのじゃが、そのヒナこそが、後の『チャンピオン・ウエストン・ラド号』じゃった。すなわち、彼も優れたヒナの健康の指標として、産毛の状態を重視していたということじゃ。

さて孵化後25日頃、ヒナは巣立ちを迎えるが、この時期になればヒナを掴んで体をチェックすることができ、その強健性を明らかに把握することができる。この際、ヒナのくちばしを開いて中を見てみることじゃ。これにより貧血の有無を調べることができるぞ。鳩が長距離を飛ぶためには、血液中の酸素を筋肉に十分に伝えることが大切じゃ。それには、血が濃くなければならず、貧血状態では話にならない。貧血のヒナは、口の中が鮮やかな紅色ではなく、赤みが不足しておるじゃろう。その他、臓器に炎症などある場合は、変わった色彩の赤さとなる。昔、ベルギーでは鳩の口内の様子をカラー刷りした書物が発行されていた。それほど口内の状態は、鳩の健康状態を知る上で重要なのじゃ。口内の状態に関しては様々なケースがあるため、ここで一概に説明はできぬが、愛鳩家各自が研究を重ねることをお勧めしたい。これまでに前述したポイント(体の大小・糞・産毛・口内)以外には、餌の食べ方を観察してみるのも、ヒナの強健性の参考になるじゃろう。

前回、今回と述べたように、まず後代検定で大切なのは、種鳩と生まれたヒナの強健性を把握することじゃ。不健康なヒナしか作出しないペアは配合を変えなければならぬし、繰り返す場合は、その原因や問題点をハッキリとさせることじゃ。本質的に虚弱な体質を遺伝させる鳩は種鳩には向かぬということじゃな。

では次回、後代検定の体型・体格について語るとするかのう…。     (この稿続く)

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