連載2-4、後代検定のポイント その三

このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。(イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ)

(二)体型・体格

鳩の飛翔能力に体型・体格は非常に大きな影響力を持つ。それは当然、スピードにも大きく作用するし、長距離レースの耐久力、さらには強風の際の飛翔にも大きく関わってくるものじゃ。

レースマンたる者、その経験値からどのような体型・体格のトリが志すレースコースに最適であるかを把握していると思うが、これらの個人見解には相違があり、言葉で表現するのは難しいものがある。

これを大局的に文章でまとめておるのが、「レース鳩品評会」での審査基準じゃ。日本鳩レース協会の品評会審査基準は、協会設立当初に欧州のレース鳩先進諸国の審査基準を検討し、草案を元として審議を加えて決定したものじゃが、この文をもってしても、実態を完全に理解することは難しいじゃろう。ただ、この記述を熟読し、様々な鳩舎の好成績を挙げた鳩を実際に掴む経験を積み重ねることによって、次第に自身の鳩に対する見る眼が身につくと考えて頂きたい。要は日々、勉強ということじゃな。

わし自身、10年前に掴んだCH鳩に比べ、昨今のCH鳩がいかに洗練された体型とすぐれた骨格形成・筋肉に改良されたか、しみじみ痛感した時期があった。協会の定款にも書かれておる「レース鳩の形質改良」じゃが、現在でもそのスピードには目を見張るものがある。これに関しては、あらゆる機会を捕まえて、優秀な鳩を掴む体験をする必要があるのじゃ。体型・体格は骨格と筋肉、それを覆う羽根や羽毛で構成されるが、レース鳩の体が完全に成長を遂げるには、2年ほどの歳月が必要と見なければならん。しかし、レースマンは、ヒナが巣立ちした時点で将来の成長した姿を想像し、判断する必要がある。なかなか完璧とはいかぬが、経験によって誤りを少なくすることはできるからのう。

ここまで、クドクドと体型・体格について述べたが、この遺伝に関する種鳩の能力評価を的確に行うことが、後代検定のポイントとして非常に大切なポイントなのじゃ。

体型・体格については、一般的に大型の鳩は小型の鳩よりも発育が遅い。いわゆる大器晩成をレース鳩の場合も十分に考えておかねばならぬということじゃ。また若鳩で勝負したい場合、比較的、小型の鳩を作出目標にした方が理論的には達成が早いじゃろう。もう一つ考えられることは、大型の鳩は見かけが立派じゃが、バランスのとれたものが少なく、骨格がしっかりしていないトリが多いように思われる。恥骨の状態で骨格の強弱を考えると、「恥骨の大きく開いたトリは駄目」とされるのは頷けるが、「左右ぴったりとくっついていなくてはならない」とまで極端に考える必要はないじゃろう。もちろん理想はぴったりとくっついたトリであるが、多くのCH鳩でもなかなかそこまではいかないものじゃ。

あと主翼を開く時、強く抵抗のあるトリと柔らかくすぐ翼を広げさせるトリがいる。主翼の形や柔らかさには諸説あるが、鳩の精神的緊張が強いと主翼は硬くなるため、やはり柔らかく素直に翼を広げさせる鳩が好ましいといえるじゃろう。

では次回、レース鳩の気力や知力に関する後代検定について、語ってみようかのう…。 (この稿続く)

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