連載2-9、相性のテスト

このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。(イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ)

交配において、相互の血統の相性が大切であることはわかって頂けたと思うのじゃが、年に1回の配合では、毎年異なった配合をしたとしても、1羽のオス鳩に対して、その生涯で10羽程度しか試すことはできない。ましてや、CH鳩はその両親の種鳩として最も成熟した時期から生まれることが多いとなると、良い相性を探すのはなかなか難しいじゃろう。要は、いかに早く相性の合う交配鳩を選び出せるかが、良い選手鳩を生み出すコツなのじゃ。

一般的に、オス種鳩が1年に最大数の交配羽数は4羽までじゃろう。その場合、第1回目は、オス種鳩にその血統と一部だけ近親のメス鳩を交配し、2番仔の産卵は仮母に抱かせて、1番仔の巣立ちと同時にメス鳩を分離して、オス鳩の交配相手を変える。第2回目は、第1回目より少し異血統が含まれたメス鳩を選ぶ。こちらも2番仔を仮母に抱かせて、第3回目は、全くの異血統のメス鳩を交配。この時はオス種鳩の欠点をカバーする性能を持つと思われるメス鳩を選ぶと良いじゃろう。第4回目は、第3回目と同じ要領で、違った血統のメス鳩を選び交配することが望ましい。各交配は、約2か月を要するため、1月から始めれば、ちょうど換羽が激しい9月頃に種鳩を分離できることとなるのじゃ。この方法なら、1年に4通りの相性を調べることが出来る。とにかく、気長にやるしか仕方ないのう。

では世界に目を向けてみて、これ以外に効率の良い交配方法は無いかといえば、目的自体は違うが、わしらも利用できる方法がある。

昔の英国のルイズ・マザレラ氏の鳩舎は、口の悪い英国の愛鳩家にいわせると、彼は鳩を飼育しているのではなく「鳩を生産している〝鳩工場〟の親方だ」といっておった。彼のやり方は、1羽の高価な種鳩に、同時に4羽の交配鳩をあてがってヒナを作出しておったのじゃ。それは、1つの大きな専用の金網張りの運動場に面して、幅と高さが約1・8mの鳩舎に4部屋(上下2段2列)の大きな巣房を作り、それぞれに運動場から出入りできる扉を取り付けておった。すなわち4部屋に各交配鳩を入れておけば、交互に交配できるわけじゃ。

わしがマザレラ氏からその鳩舎を見せてもらった時「これは非常に効率的な方法である」と、ずいぶん自慢されたものじゃ。彼は多数の仔鳩を作るのが目的じゃったが、わしらのように相性を見つける目的で行っても、かなり交配を試せるじゃろう。

わしらはややもすれば、自然を尊重し、1羽の種鳩には1羽の交配鳩をペアにして繁殖せねばならんと考えがちじゃが、競走馬の繁殖には人工授精で、ビックリするほどの優秀馬の仔馬が生まれており、畜産の世界では、さらに優秀な遺伝子だけ残す方法が採用されておる。レース鳩の繁殖もより合理的に、かつ健康的な種鳩の活用を図ることが、今後の課題じゃろうの。

重要なことは、種鳩に充分な運動と栄養、日光浴や水浴に配慮し、最善の環境を整えた上で、飼い主が個々の種鳩に応じた休息を与え、体力の消耗を考慮した慎重な取り扱いの下に繁殖を進めることじゃ。

では次回、種鳩の管理について、語るとするかのう…。     (この稿続く)

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