連載2-8、相性について

このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。(イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ)

さて、レース鳩の作出にあたって、大切なことに相性がある。様々な優れた系統同士の交配でも、産まれた仔が優れた能力を示すものと、そうではないものがあるのはご承知の通りじゃろう。そこで、一つの系統に対して、それと交配して優れた結果が生まれる系統を〝よくニックする系統〟(相性の合う系統)と呼ぶのじゃ。

ある基礎系統に対して多数の系統を交配し、生まれた仔を後代検定で確認し、よくニックする系統を選ぶことは、レースマンならだれもが無意識に行っていることじゃが、もう一段上を目指すためには、意識してそれを行い、さらに優れた作出へと導かねばならん。

レース鳩の品種は1900年代当初、大型のアントワープ種、小型のリェージュ種、ベルビエール種、中間のブラッセル種といった具合に、大きく種族が分類されていたようじゃが、近年は交雑されており、その区別はなくなっておる。すなわち、かなり近親のものもあれば、全くかけ離れたものもおり、そのために相性の合う、合わないがある訳じゃ。

昔の一般論としては、大型系は大型系もしくは中型系との交配、小型系は小型系もしくは中型系と交配が、相性が合うとされてきておった。もちろん、これは原則的なことで例外もあり、時代と共にその傾向が消えつつあるともいえる。また系統によっては、非常に幅広い相性を持ち、どの系統と交配しても好結果が得られるものがある。例えば、シオン系やデルバール系は、非常に幅広い系統と相性が合うことで有名であった。わしの考えでは、どうもレース鳩の場合、余り遠縁の系統では相性が合わず、ある程度の近縁には相性が合うことが多いのが傾向じゃ。要するに、有名な血統から分かれて別の環境で飼育され、優秀な成績を上げている系統を元の系統に交配した場合、あるいは別れた系統で好成績を上げているものが2系統以上あり、それを相互に交配した場合などに、よくニックするものが認められておるようじゃ。

戦前の米国鳩界に、常勝鳩舎であるイー・ラング・ミラー鳩舎がおったが、ここの基礎鳩は英国の有名なオスマン系であった。彼はかなり離れた郊外にもう一つ鳩舎を構えており、異なった環境で繁殖させた同系のトリを自鳩舎の作出鳩と交配し、勝ち続けることができたといわれておる。もちろん、オスマン系が当時、世界的にもナンバーワンの系統であったことは加味せねばならんが、同一系統を異なった環境で飼育・繁殖し、その相互交配から良い作出ができた一例じゃろう。これに倣い、ぜひとも作出の際は、環境の異なる場所で連続して好成績を上げている系統で、祖先を共通しているものを探してみて欲しいのう。

よくニックする系統を見つけるのは、簡単なようで難しい。前述は、作出の一つの手段となるじゃろう。かくいうわしも、英国のビクター・ロビンソン系のオスと、米国のモーリス・ゴードン系のメスを交配して、好結果を得たことがあるのじゃ。父方、母方共に、基礎はオスマン系じゃ。ちなみに、ロビンソン氏の有名な〝マドモアゼル〟(ポーN優勝・同2位)は、同市の系統に同じオスマン系を基礎にして作られたストダー系を交配して生まれたチャンピオン鳩なのじゃ。

では次回は、相性のテストについて語るとするかのう…。     (この稿続く)

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