連載2-10、種鳩の管理

このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。(イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ)

今回は、種鳩の理想的な管理についてじゃ。毎年、夏の終わりに種鳩はその年の繁殖を終わり、その後は管理上でさらに注意を払うべき、換羽の季節となる。

この時期は、それまでの繁殖で巣房のヒナに様々な面で気を使い面倒を見てきたこともあり、なんとなく一仕事終えた気になり、ホッとすると同時に気の緩みも生じやすい。しかし、このような時こそ「今、来シーズンの繁殖のスタート地点についたのだ」と認識しなければならないし、この時期の種鳩管理をしっかり行わないと、翌春の繁殖が駄目になってしまうことを、充分に承知せねばならぬ。

繁殖後の種鳩の管理じゃが、まず8月中に雌雄を分離して、別の鳩舎に収容する。この場合、通常はメス鳩のみ繁殖用の鳩舎から分離して、オス鳩はそのまま。巣房から巣皿を取り除き、できれば巣房半分にオス鳩だけがいるようにすると良いじゃろう。この時、鳩舎の巣房の数よりオス鳩が多いこともあるが、その場合は巣の取り合いが起こらないよう注意が必要じゃ。巣房を狭くして巣守るのに都合よくすることも、オス鳩同士の喧嘩を防ぐには役立つじゃろう。

換羽では、給餌を少なくするか、一両日を絶食させると、促進されて急にドカッとおこることもあるが、わしは徐々に進行させた方が自然ではないかと思うのう。従って、栄養にも配慮し、鉱物飼料やカルシウムの補給も充分に行う必要があるじゃろう。わしは、蛋白源として豆類を加えるが、過食にならないように量の面では加減しておる。タンパク質に富む資料を過剰に与えると、換羽という発情の乏しい時期でも、メス鳩には発情して同性で卵も産むトリもいるため、栄養過多は慎まねばならん。

換羽が上手く終了することは、種鳩としての絶対条件であり、完全な換羽が出来なかった場合、来春の配合からは除外するべきじゃろう。このような種鳩からは、決してCH鳩は作出できぬのもじゃ。

また雌雄分離中の種鳩も運動、日光浴、水浴は大切である。選手鳩に対するほどの厳しい運動は必要ではないが、適度にやらせたいものじゃ。昔、スコットランドのアンダーソン鳩舎は、種鳩に充分な運動をさせるため、高価で入手したCH鳩も、鳩舎に馴致して繁殖に使ったといわれておる。ただ、わしらの場合、購入したオス種鳩の馴致は、次の春まで待って、馴致は卵が孵化してヒナに脚環をはめ、次の産卵のためにメス鳩を追っている状態で馴致。メス種鳩は、卵が孵化して2、3日の状態でヒナに対する愛情が深まった時が、馴致にもっとも好機であるから、それまで辛抱するべきじゃろう。少し脱線してしもうたが、種鳩といえども運動が必要である点は承知しておいて欲しい。

さて、換羽が終了すると、種鳩達は発情を始める。その時期はまだ寒いため、特別な目的や環境下でない限り、そのような早い時期に繁殖しない方が望ましい。交配の時期は、野鳥たちが巣作りを始める頃まで待つ方が賢明じゃ。慌てても決して良いものはできぬ。それよりも種鳩の発情をなるべく抑えるように飼育する努力が必要じゃ。発情を抑えるには、餌のタンパク質を控えめにし、大麦などの低カロリー食を多く混ぜることで、満腹に食べさせてもいける。ただし、餌の量や質を落とし過ぎると、寒い時期に栄養失調から抵抗力の低下を招き病気になることもある。このあたりの加減をうまく行うことが、繁殖シーズンを迎える準備として、大切になるのじゃ。

なお雌雄の分離で注意すべき点は、老鳩のオス種鳩は長期の分離により、授精不能となってしまう場合もあることじゃな。特に、他鳩舎から導入した直後は配慮が必要じゃ。一般論としては、ひと月に2、3度ほどメス鳩を朝から終日、オス鳩の鳩舎へ戻してやり、ストレスを除いてやることが良いじゃろう。雌雄の分離は、来シーズンへ向けての配合変更には、非常に便利であるし、種鳩の健康のためにも、ぜひお勧めしたいものじゃ。

では次回、ヒナの生まれ月について語るとするかのう…。   (この稿続く)

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