連載2-20、交配について その八

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

このように、レース鳩の作出を改めて考えてみると、実際になかなか大変な作業であることに気付くじゃろう。各々の鳩舎にとって好ましい、本当に成績向上に寄与してくれる種鳩を見つけるのは難しいし、なかなか入手できないものじゃ。色々な研究努力を重ね、ようやく自鳩舎に迎えた種鳩でも、そう簡単に結果が生まれないことも多かろう。

レース鳩の交配において、会心の種鳩を得るということは誠に難しいことと覚悟せねばならぬが、この難しさが鳩レースのたまらない魅力の一つでもある。まあ、各地域、そして全国の愛鳩家がこぞって研究し、皆が優秀な鳩を作るべく努力しておるのじゃから、それに打ち勝つ鳩作りは、そう簡単にいかぬのが普通じゃのう。

そこで一度、自鳩舎の基礎血統検討を加えてみることも必要じゃのう。要は、それまでに異血の導入で運よく成功を収め、さらに異血交配を進めるとして、果たして自鳩舎の血統の遺伝因子の優秀性に確信が持てるかということじゃ。

なぜこのようなことを話すかといえば、いわゆる「当り配合」に関して、全てが遺伝因子的に素晴らしいものを備え持っているかというと、誠に疑わしいのじゃ。なるほど、レースでの成績は良かった。ただ、その直仔に優秀な飛翔性を示す鳩がたくさんいるかといえば、微妙なところじゃ。ここが鳩レースの難しいところであり、面白いところでもある。この点をしっかりと考えねばならん。

第一には個々の鳩の飛翔能力(レース成績)と遺伝能力(優秀な種鳩)は違うということじゃ。同じ配合の兄弟姉妹で最も優秀なレース成績を上げたCH鳩が最良の種鳩とならず、むしろ他の兄弟姉妹の方が良い仔鳩を産みだすケースも多い。個体の表現型(レース成績)だけを頼りに作出しておると、失敗を招くこともあるぞ。

そのため、わしは「後代検定が良い鳩、良い系統を作る上で最も大切」と強調してきたのじゃ。これは兄弟姉妹のみならず、一つの血統の鳩群の中でもいえる。好成績を上げた鳩の血統を注意深く見れば気付かれると思うが、有名系統の鳩の中にもさほど素晴らしい飛翔成績でなかった鳩の直仔に、あっと驚く好成績の鳩が作出されるケースがそれじゃ。そこで自鳩舎の基礎血統の鳩の中で中心となる種鳩を選ぶ場合、飛翔成績よりむしろ後代検定を判断基準にし、選定すべきじゃ。遺伝因子型の優れた種鳩を常に頭に置き、着実に性能の比較を行い、そこから自己の血統を作り上げるようにすることが大切じゃ。

ここで再び交配論に戻るが、欧州の有名鳩舎が何十年もの間、どのように変遷したかを見直し、その浮沈の原因を検討することは、非常に有効であろう。幸いなことに、現在では、そのための資料を多少なりとも手に入れることができるじゃろう。わしらが鳩レースを楽しみとして、少数精鋭で作出を楽しみ、作出した鳩達で充分な戦いを展開するために、この努力は決して無駄にはならぬと思うがのう。

では次回も交配について考えてゆくとするかのう。

(この稿、続く)

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