連載2-66、レース鳩の飼料 その五

では前回の続きで、「伝書鳩の研究」から飼料配合の記載を拾っていくぞい。
④日本海軍(白エンドウ70%、粟10%、麻の実10%、トウモロコシ10%)
武智大尉の研究によるもの。1日量はおおむね38g、この中の麻の実を菜種に変える場合は玄米を約2g程度加給する。粟を得ることができない場合は、トウモロコシで代用してよいが、トウモロコシの合計量は20%を超えてはならない。
ヒナの生後の日数によって、1日量の大要は4週以上8週25~30g、8週以上20週30~35g、20週以上35~38gと変化する。その他、生野菜を刻み、1羽に対し3日に8gの割合で与える。
飼料の与え方は、早朝に1日量の30%、正午に20%、日没約1時間前に50%を与えるのが最も好結果であった。1年を通じて、11月から2月まで(休息期)は運動量も多くないため、朝夕の2食制でもよい。厳寒の頃は空腹で1夜を過ごさせると風邪をひきやすいので、夕食は比較的多めに与えるべきである。繁殖期には産卵の約2週間前から、次第に増量して通常の1日量に戻す。ただし、余るほどは与えないこと。孵化後はヒナにも餌を与えなければならぬため、1日量は40~45gに増加し、1日3回の給餌にする。
訓練期・活動期には長距離飛翔のことも考え、1日2食の状態に慣れさせる。もちろん、この時期には十分な餌量を与えねばならぬが、満腹になるまで与えてはいけない。
換羽期は1日量を次第に減少し、4分の3とする。またエンドウを減して、トウモロコシを40%まで増加することもある。換羽が終わりに近づくに従い、元に戻す。
しかし、総じて注意すべきことは、飼料の変更は極めて徐々に行うべきである。
戦前の日本鳩界は、軍用資源としての立場で軍の指導の下、発展してきたのじゃ。そのため、飼料についても当時入手できるものであるし、配合基準は欧州のレース鳩の飼育方法に準じておるわけじゃ。
わしが、このような昔話をするのも、日本の愛鳩家がこれまで覚えてきた飼料に対する知識の源流である戦前の基本的な考え方を認識しておくことが、様々な点で役立つのではないかと思ったからじゃ。
鳩の飼料と与え方は、一見何でもないことのようであるが、これは飼育という面から見ると、非常に大切なことであるぞい。さらには、レースで好成績を上げるためにも、極めて大切なことになっておる。その意味でも、温故知新ではないが、これまで述べてきた先の時代の愛鳩家たちの意見を今一度かみ砕いてみることも、必要ではないかのう。
では次から、追想の最後の章として、昔行ったわしとデ・スカイマーカー氏との対談を記していくこととするかのう…。
(この稿、続く)