連載2-64、レース鳩の飼料 その三

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

前回に続き、第3に挙げられておる飼料は、麻の実、菜種など脂肪性飼料として用いるものじゃ。これらは、鳩が好むものであるからして、なるべく粒のそろったものを選ぶようにとされておる。

玄米は補助飼料として重視しており、鳩の好む飼料としても挙げられておる。大麦や小麦はその代用になるが、発酵しやすいため、胃腸を害する恐れもあるとされておるのう。

また青菜は「鳩に活力を与える意味で、常時新鮮なものを与えよ」とも記されておる。なお鉱物飼料では、塩分とカルシウムの補給として塩土を与え、これに木炭などを加えると下痢防止に役立つと書いておる。

これまで述べたことは、「軍用動物学」から要点を書きだしたものじゃが、今度はこれに捕捉された「伝書鳩の研究」から拾ってみるとするかのう。

まず豆類については、その変質したものの有害性を強調しておる。トウモロコシは鳩の好物で、若い鳩は食べすぎになりやすいため、与えすぎてはならぬと書いておる。また麻の実の多用は、(多少なりとも)麻薬としての作用があり注意となっておるが、これは鳩と人との体質は違うので、個人的には大丈夫ではないかと思うがのう。

菜種は鳩の喉が渇くのを防ぐのに有効とされておる。ベルギーのリエージュ地方の愛鳩家たちもレーサーには多くの菜種を与えるそうじゃ。その他、ヒエや粟も気熱性があり、鳩を興奮させる恐れがあるため、多くは与えぬようにとされておるのう。逆に蕎麦は体温を下げ、特に換羽を良好にするとされているが、これも過信は良くないぞい。カルシウムの補給には、イカの甲をつぶしたものが良いようじゃ。なお、塩分や糖分の補給には、それぞれ味噌、氷砂糖を与えると良いとも。その他、ゆでたジャガイモを乾かして砕き、塩を振ったものを、長距離レースで帰還した鳩に与えると良いとされておるのう。

飼料の記載を紹介したついでに、飲料水についても触れておくかのう。清潔な水であることはもちろんじゃが、注目すべきは「筧(カケヒ)の溜り水は極めて有害なため、決して鳩に飲ませてはならない」とある点じゃ。そのため、溜り水ができるところは、板などで覆っておくべきじゃろうのう。現在、わしらも経験しておるトリコモナス病など鳩の各種の病気の原因が述べられ、その予防手段を記されている点には感銘を覚えたものじゃ。

ここまで、戦前の愛鳩家たちの飼料に関する考え方の要点を挙げてみたぞい。

では次回、戦前の飼料の配合についての考え方を拾ってみるとするかのう。

(この稿、続く)

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