連載2-62、レース鳩の飼料 その一
レース鳩を健康に飼育し、その鳩の持っている飛翔能力をレース面で完全に発揮させるために、いやそれ以上に、さらにその能力を伸ばし引き上げるためには、果たしてどのような飼料を与える必要があるのか…。
この問題については、昔はあまり多くの調査研究がなされておらなんだのじゃ。過去に、わしが欧州に渡った時の情報から、わしなりの見解をまとめたことがあるので、それをここに記しておくことにするかのう。ただ、以下の情報は当時のものであるから、現在とは違う点もあると思うが、その辺りはご容赦頂きたいものじゃ。
まずは、当時のベルギーとオランダの飼料事情からじゃ。ベルギー・オランダの両国ともに、港湾に位置した好適地に飼料会社があり、我が国と同様に袋詰めにした混合飼料を使っておった。
各社の販売品目とその配合割合を調べるため、82年4月にベルギーのA社とオランダのB社を、それぞれ訪問したことがあってのう。
A社は、配合飼料の配合率は企業秘密とのことで、公表を渋っておったが、わしの目的を理解してもらい、なんとかその配合率を教えて貰うことができたのじゃ。
その時、これらの配合飼料(下記表)をベルギーの競翔家たちはどの程度、利用しておるのかと考え、当時のINレースで好成績を収めておったファンスピタール氏に尋ねてみたのじゃ。すると、おおむね8割のレースマンが市販の配合飼料を基礎に、それぞれの好みで追加しておるのが現状とのことじゃった。
ちなみにファンスピタール氏の基礎飼料は、トウモロコシ25%、そら豆25%、小麦25%、ダリー25%で、これに大麦を多く加えておったそうじゃ。また、小粒飼料はカナリアシードや麻の実、サフラワーなどじゃった。
この時、ローセンス氏やインブラヒット氏にも会う機会があったので、同じ質問をしたところ、やはり基礎飼料は市販のものを使っているとのことじゃった。もっとも、2人は「A社のものではない」と言っていたので、その詳細は分からぬがのう。
またB社は、非常に機械化された設備を持っておった会社で、きれいに磨き上げられた清潔な飼料であるとの印象を受けたのう。配合飼料の種類も多く、品目に配合率が明示されており、好みに合った品を選べると同時にレースマンの好みの追加がやりやすいという印象を持ったものじゃ。当時は、「日本でもこのような飼料が販売されてくれれば…」と切望したことを覚えておるぞ。
では次回、当時の日本の飼料についての考え方を考察してみるかのう…。
(この稿、続く)