連載2-61、種鳩導入を考える その四
さて前回までは、色々と作出のための交配の方法論を述べてきたのじゃが、基本的にわしらが十分に承知しておかなければならない原則は、まず理想とする優秀なレース鳩の備えておる優れた点を列挙しておくことじゃ。
あとは現在、自分が作出の中心にしようと考えている種鳩達について、果たして自分の種鳩が、この条件をすべて満足させているかどうかを検討することかのう。
もし不十分な点があるならば、それを補うために十分な性能を備えた新しい血を導入して、これを交配することじゃのう。
このように、寄せ木細工のような優秀性の蓄積とその間に行う近親交配の積み重ねによって、自分の理想とするレース鳩の優秀な性能を1羽の鳩に兼備させるように努力することが必要じゃ。
スピード性の強い鳩は、えてして粘りが足らず失踪しやすい。このような点を何とか改善したいとの願いの元、スピード性の血統の鳩にねばりのある血統の鳩を交配してみる。そうして、できた仔鳩を飛ばしてみて、果たしてどうか?
たいていの場合、中途半端なハトしかできないというのが、これまでわしらが経験してきたことじゃろう。しかしながら、これを根気よく試みてゆけば、多数の硬派の中から一つでも、うまくいく場合がある。残念なことに、このようにうまくいくケースはまれであるということじゃ。
となれば当然、もっと成功率の高い方法はないかということを考えるのが人の性よのう。この場合、理論的な良い方法は、一代目を期待せずに、その次の世代を目標に据えることじゃ。すなわち、孫以降の世代で目的が達成できるかどうかということで、ここを目標に設定すれば、成功率ははるかに高くなるじゃろう。
では、そのためには何をする必要があるじゃろうか?まずはわしらが種鳩として使う鳩をあらゆる角度から分析してみること。中でも大切なのは、その鳩自身の性能よりも、その鳩が作出した仔鳩の飛翔成績はどうであるか、ということを重視せねばならぬのう。
作出した仔鳩たちの成績を検定することを後代検定というが、これは作出において非常に大事なことなのじゃ。これをよく、理解しておいてほしいものじゃのう。
これで、わしが持っておる知識は出しつくした感があるぞ。そろそろ、物語もおしまいにしなければならないようじゃ。長い間お付き合い頂き、感謝しておるぞい。
次からの数稿が、最後の話になるようじゃ。日本の古い文献と半世紀近く前のことになるが欧州に訪問した際に得た飼料などの知識を披露して、わしの語りを終えようと思うぞ。
では、もうしばらくお付き合い願えるかのう・・・。
(この稿、続く)