連載2-60、種鳩導入を考える その三
今回は、種鳩の交配の相手の選び方について、考えてみようかのう。
まず頭に置いておかねばならぬ原則は、有名鳩舎から入手した種鳩を同一鳩舎の種鳩と交配するかどうかじゃ。
レース鳩の場合、純何々系ということを考える必要はないぞ。その様なことにとらわれていては決して良い鳩は作出できないからのう。なぜならば、純何々系と称することができるような固定したレース鳩の品種は、基本的にないからじゃ。このようなことにとらわれず、良い交配相手を見つけようとする姿勢が大切じゃな。
したがって、交配相手はその鳩とは別の鳩舎で作出された鳩をえらぶことじゃ。そうすることにより、より優れた遺伝形質を集積することができるからのう。
鶏の遺伝学の研究で有名な増井 清教授は、1羽の代表的な鳥ができた場合、その優秀性を子孫に残す方法として「総交配を行うべし」と述べておられる。すなわち好ましいと思われる相手を次々と交代させて交配すべし、という趣旨じゃ。
考え方によっては、このことは非常に初歩的な、無定見な考え方じゃと思われるかもしれぬが、増井教授のおっしゃる通りで、実際にはどの交配が当たるかはわからぬ。
わしは半世紀以上、レース鳩を飼っておったが、この総交配論が、現在でも最も正しい育種の第一歩じゃと考えておる。
このように、いろいろな相手と交配して多数の血統の異なった子孫を作っておけば、次の段階として、それらの子孫同士を極端な近親交配による弊害を避けて、相互に交配することが可能になるのう。それによって、優秀な源鳩の性能をさらにより優れたものに作り上げていくことができるのじゃ。
例えば、優れたチャンピオン鳩にA・Bの異なる血統の鳩を交配し、それからできた子孫をAの仔×Bの仔といった交配により、同様の立派なチャンピオンが作出されるケースは、古来よりたくさんあるものじゃ。
さて、鶏のことを語ったついでに、もう一つの交配の考え方も紹介しておこうかのう。
それは戦前の多産鶏作出の華やかな頃に、東京都の浦上武次郎氏が主張された復元交配法じゃ。これは4分の1、異血を導入することで近親交配の害を抑え、より良い遺伝因子の注入集積を図ろうという考え方じゃ。
現在の鶏の育種は集団遺伝学によっておるため、レース鳩のような少数の交配に取り入れる手段は見当たらぬが、戦前の産卵検定などに聞く苦労話は、わしらの参考になるものもあるぞ。
ではこの続きは、次回に譲るとするかのう…。
(この稿、続く)