連載2-57、理想の鳩を作るために その二

イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ
このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

さて前回も述べたが、理想の鳩を作る上で大切なことは、悪天候克服性に優れた血統じゃ。そうでなければ、一度レースで優勝や上位入賞といった素晴らしい成績を記録したとしても、その後の訓練やレース中に思わぬ悪天候にぶつかってしまい、あっけなく失踪してしまうような残念なことになってしまうからじゃ。

こうなってしまっては、作出や系統作りはまた一からやり直しじゃ。やはり、雨にたたかれても、粘り強く帰舎する鳩でなければのう。そうならぬためにも、過去数年間の成績を入念に調べ、悪連衡のレース成績も十分に参考にして、種鳩導入を計る鳩舎を選ぶべきじゃろう。

もし自分が住む地域で導入するに値する鳩舎がなければ、日本中に目を向けるべきじゃ。気になる鳩舎を見つけたら、その地区に古く住む信用のおける愛鳩家にも意見を聞いて、この2大特徴(スピード性・悪天候克服性)を備えた血統を手に入れるようにすれば良いじゃろう。また、気になる鳩舎を見つけた場合、注意しなければならないのは、その地区のレースが本当に優れたスプリンターの集った激戦区であるか否かじゃ。まあ以前にも述べたが、近年の日本鳩レース界のレースは、新しく輸入されたベルギー・オランダ・ドイツなどの俊鳩によって、スピード面では見違えるほど向上してきておる。そのため、全国的のどの地域の鳩舎を選んでも、大差はないかもしれぬのう。

なにゆえ、わしがこの方法をまず推薦するかというと、スピード性に富んだ鳩に悪天候克服性のスロー型の鳩を交配したからと言っても、単体同士では、結局得られる仔鳩は両親の性能のどっちともつかずといった中途半端な鳩しかできないケースが多いからじゃ。スピード性にしても悪天候克服性にしても、共に単一の遺伝因子で形成されていないから、そうなるのも当然のことじゃ。

だからこそ、第一弾の着手としては、この特性の両者を兼ね備えたレース鳩を基礎として、その性能をいかにして引き上げていくかと考えた方が、成功への近道じゃと思うのう。

もしも日本中を探しても、もはや自分が満足できる両性能を兼備した優秀な血統が見つからない場合は、次に世界のレース地域に目を転じて、そこから自分の理想とする血統の鳩がいるか否かを検討すべきじゃろう。

この時に注意する点は、その土地の降雨の状態、地形はもちろん、その地域の愛鳩家達が本当に世界でも選りすぐった鳩でレースを展開しているかどうかじゃ。以下に参加羽数が多くとも、そのレースに参加している鳩達が精鋭でなければ、いかにその地域で好成績を残しておったとしても、最近の目覚ましい進捗を示しておる日本鳩レース界に導入しても芽が出ない結果に終わってしまうと思うぞ。

では次回、種鳩導入について、さらに考えていくとするかのう…。

(この稿、続く)

前へ

連合会便り 成田連合会(千葉東地区連盟)

次へ

趣味のピジョンスポーツ 第18回「鳩レースで、苦手なコミュニケーションを克服」 菅井尋也さん(北関東連合会)