連載2-53、体形と性能 その二
前回に続いて、レース鳩の体形の話じゃ。品評会の審査基準に示された体形であるレース鳩はレースでも好成績を残すケースが多いという話じゃったの。この考え方は、わしだけではなく、ベルギーなどの有名愛鳩家の中にも、このように考えておられる方は少なくなかったぞい。
とはいえ、もちろん物事には例外もあってのう。それは分速の出ない悪天候でのレースや短距離レースの場合じゃ。その他にも、わしが当時のベルギー鳩レース界で目覚ましい成績をあげておったデニス鳩舎の『ブレクセム号』(※この鳩は、後にイギリスのルイズ・マザレラ鳩舎にトレードされ、世界的な名鳩と宣伝された)にしても、またリチャード・メルシュ鳩舎の『ジュール・オンズ号』にしても、わしがそれぞれの鳩舎で手にして拝見した限りにおいては、決して品評会の審査基準に当てはまるような体形の鳩ではなかったぞ。まあ、この鳩たちは体形以外の点で非常に優れたものを持っておったと考えられるのう。
さて体形の問題の中で、わしらが非常に大切に考えていかなければならない点は、筋肉についてじゃ。筋肉はその時々の鳩の健康状態と運動によってさまざまに変化するものじゃ。十分な運動を行っておらぬ筋肉は全くダメなものじゃろう。強く硬く、よく発達した筋肉は何物にも代えがたい美しさをもち、かつ優れた飛翔能力を示すものじゃ。運動することによって、筋肉は血流が旺盛となり、より一層強く弾力性を持った姿に発育するものじゃからのう。
筋肉をよくするためには、舎外運動はもちろん、必要に応じた適度な放鳩訓練も望ましいことは周知の事実じゃ。骨格も筋肉と同様に、運動することによって立派に発育し、強くたくましくなり、逆に運動が不足することにより、弱々しく退化するものじゃ。翼や羽毛に関しても、これは日常の管理の影響を見逃すわけにはいかぬと考えるべきじゃろう。
要するに、わしらはレース鳩の体形について、その時点においての管理上の影響を強く受けることを念頭に置かざるを得ないが、やはりその根本をなすものは遺伝学的な素質じゃのう。
同じ両親から生まれた兄弟鳩でその飛翔性能を比較するならば、やはり体形の優れたものの方がより優れたレース成績を上げておることを体験したのじゃ。ただしこの場合、先に述べたように、他の因子が加わることは十分に頭に入れておかねばならぬ。
作出にあたって、より優れた体形の鳩を作り出すことを考えるのは、若鳩たちのレース成績をより良くするための基本的な問題点であり、この点に関しては、異論はないものと信じておるぞ。
では次回、レース鳩の悪天候の克服性について、語るとするかのう…。
(この稿、続く)