愛鳩の命を大切に思う心

2016年の「石清水放生会」。鳩の放鳩シーン、写真左は花尻さん
このコーナーでは、レース鳩や当協会に関する、会員の皆様から寄せられた事柄やマスメディアで紹介された事柄など、様々な情報をご提供します。

皆さんは「放生会(ほうじょうえ)」という言葉をご存知でしょうか?

これは、捕獲した魚や鳥獣を野に放し、殺生を戒める宗教儀式です。この言葉は元々、古代インドに起源を持つ仏教の戒律である「殺生戒」のことで、日本では神仏習合によって、神道にも取り入れられています。起源は天武天皇の時代から始まったといわれ、近畿地方を中心に定期的に行われてきましたが、時代は変わり、明治政府の神仏分離によって、一旦、廃絶。近年、各地でその再興が行われています。

さて京都府八幡市にある「石清水八幡宮」では2004年10月、同儀式が137年ぶりに復活。以来、毎年、旧暦8月15日(9月15日)に「勅祭 石清水祭」(石清水放生会)として、京都府八幡市の鳩ヶ峰(別名・男山。こちらの山上に「石清水八幡宮」があります)の裾を流れる放生川に魚や鳥を放っています。(写真1)
金魚や鯉、鮒、鰻といった魚にスッポンを放流する他、鳥は鳩を放ちます。毎年、この儀式に施主として参加しているのが、大阪市在住の花尻充由さん(なんば)。ここ10年ほど続けて参加しており、今回は2018年に同儀式に参加した時のスナップをお送りいただきました(写真2)。

花尻さん曰く「レース鳩は命がけで、必死に飛んでレースを帰還しています。私たち愛鳩家は愛鳩の命を思い、このような供養を行うことが大切ではないでしょうか」とのこと。

また花尻鳩舎と言えば、日本鳩レース界において、モスキート系で一世を風靡したことは有名ですが、その名鳩『モスキート』の命日は7月15日。花尻さんはその供養の一環で、祭壇へ供え物として飾るため、ユリ科の「カサブランカ」を育てているそうです。同鳩を飼育し始めてから50年目の一昨年(生誕からは60周年)、そのうちの一鉢が、あまりに見事な花を咲かせたため、地元の「住吉大社」へ奉納されたとのこと(写真3)。

また、花尻さんのお知り合いである青森県にお住いのモスキート愛鳩家の僧侶の方(佐藤健瑞和尚・浄業寺)も、同鳩の命日や8月10日(語呂合わせでハトの日)に、散華した鳩達の命に思いを馳せ、供養を行ってくださっているそうです。

飼い主のために、命を懸けてくれるレース鳩。全国の会員の皆さんも、愛鳩たちへの限りない愛情を胸に、これからもレースを楽しんで欲しいものです。
(資料提供/花尻充由氏・なんば連合会)

2018年の「石清水放生会」。神官、ご家族と共に記念写真
住吉大社に奉納された「カサブランカ」

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