連載2-52、体形と性能 その一

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

レース鳩の作出にあたっては、常にどのような体形の鳩が、本当にレースで好成績を上げられるかを十分に知っておくことが大切じゃ。

これは実際には非常に難しい問題で、文字で書き表すことになれば、品評会の審査基準のようになってしまうのう。要するに、それを読んだところで、決して十分に理解が行くものとも思えぬということじゃ。やはり好成績のレース鳩の実物を手に持たせてもらい、自ら体得しなければ、頭に入ってこないものじゃ。「百聞は一見にしかず」という言葉通り、多数の俊鳩たちを手にして初めて、その判別が身につくこととなるという訳じゃ。

わしらが理想的な体形として考えておる、品評会の審査基準に当てはまるレース鳩は、(レース鳩の)先進諸国の愛鳩家たちが、実際にレースで飛ばした体験から「このような鳩がレースでスピードが出るのだ」、「特に長距離レースで好成績を上げるのだ」という意見を集約して作り上げたものであるから、審査基準はまさしくレース鳩の作出にとって、一つの究極の目的であるはずじゃ。しかしながら、この基準を満たすレース鳩が全てのレースにおいて優秀な成績を上げるかというと、これには経験のある愛鳩家の誰しもが真っ向から反対意見を述べておる。

ここでよく考えておかねばならぬことは、品評会の審査基準を満たしたレース鳩は、レースで好成績を残すために必要な条件の一つを満たしておるのであって、この他に方向判定能力や体力、気力といった諸条件が伴わなければならぬということじゃ。
それでは逆に、非常に立派な成績でレースを飛翔した鳩は全て、品評会での評価が良いかと言えば、そうとは限らない。

品評会に出陳して好成績を上げるためには、第一に美観が問題となる。81年のオリンピアード審査の状況を見ていても、審査員の頭の中で大きいウエイトを占めているものは、見て美しいということじゃった。こうなると、首から上の美観が大きく影響することになるのう。しかしながら、レース鳩の飛翔能力と関係の深いところは、首から下の体と翼、羽毛である。

わしは幸いにも、大レースの当日審査に際して、優秀な成績で帰還した鳩たちをたくさん手にして拝見することができたが、その体形は品評会においても良い成績を得るであろうと思われる鳩が多いことに驚かされたものじゃ。やはり、レース鳩としての体形の理想像は、品評会の審査基準に示されておるもので間違ってはおらぬと痛感したと記憶しておるぞ。とはいえ、物事には例外もあってのう…。

おっと残りのスペースが少なくなってきたようじゃな。ではこの続きは、次回に譲るとするかのう…。
(この稿、続く)

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