連載2-50、作出について

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

すっかり暖かくなって、春本番といったところじゃが、皆さんもすでに作出を始めておることじゃろう。
そこで、その場でもう一度、自鳩舎の種鳩を見直してみるのも決して無駄ではないと思うのう。シーズン終了時に、いかに立派な成績を残しておる鳩舎であっても、その好成績を得た時点で次の作出計画を立て、新しい血の導入を図らねばならぬじゃろう。
良い成績をもたらした選手鳩を作出した種鳩達はすでに老鳩になろうとしておるかもしれぬし、またその頃になると、自鳩舎の鳩達の血縁関係はかなり近親が強くなっておるはずだからじゃ。近親交配は必ず、その差はあったとしても、大なり小なりに鳩の抗病性の低下を招くものじゃし、競争動物として非常に大切な強健性を失う結果となるじゃろう。
競馬界には、文豪・菊池 寛の「無事之名馬」という名言が今でも語り継がれておる。鳩の世界でも、これは全く同じことじゃろう。病弱な鳩や故障がちな鳩では勝てるはずもないからのう。
さて、異血の導入を図る時、大切となるのは、どこのどのような血統の鳩を選ぶかということじゃ。そのためには、もう一度、自鳩舎の地域での大レースの優勝及び上位入賞鳩の血統を吟味する必要があるのう。そうすれば、自鳩舎の地域では何系が良いかという点での基本的な考え方ができるじゃろう。また、時代をさかのぼって、過去数年間の大レースの上位入賞鳩舎の血統を調べたならば、ヨーロッパの優秀血統が入賞鳩を作る上で、いかに役立っているかが、ハッキリしてこよう。なかでも、レース鳩のスピード性を与える面で、ヨーロッパ輸入系の寄与・貢献は、実に素晴らしいものがあるのう。
従来の日本の鳩レースが最長距離重点主義に大きく傾いていった結果、粘り強い持久力のある鳩は出来上がったが、反面でスピード性には欠けざるを得なかったのじゃ。
一方、過去の我が国の天気予報はといえば、現在からみれば非常にお粗末なもので、外れることも再三であったが、今や気象衛星などの整備や高性能のコンピューター導入によって、非常に正確なものとなり、レースが悪天候にぶつかってしまう恐れは極めて少なくなりつつあるのう。
従って、最もスピード性に優れた特徴を持つ血統の鳩で、なおかつ持久力のある、山岳地帯の翔破能力が高い(逆風や乱気流を克服する能力も含む)といった点で優れたレース鳩に、日本での長距離レースでは上位入賞のチャンスが非常に大きいことになってきた訳じゃ。その様なことを考えていくと、わしらはいかにこの条件を満たしてくれる異血を導入するか真剣に考えなければならぬことがわかるじゃろう。
おっと頁が残り少なくなってきたようじゃ。ではこの続きは、次回に譲るとするかのう…。
(この稿、続く)

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