連載2-49、世界の鳩界事情 その二十二
●レース鳩の原産地
これまで世界の鳩レース界事情とレース鳩の性能について述べてきたが、その最後にぜひ付け加えておかねばならない事実があるのじゃ。それはレース鳩の原産地は、だれが何と言おうがベルギーがその中心であるということじゃ。欧州の同国を取り巻く隣接諸国は、いずれもその起源とみなされる基礎鳩の大半はベルギーからもたらされておったことからも、その説がゆるぎないことがわかるのう。
したがって、各国それぞれの国情によって、これまで述べてきたような性能面での特色が生まれてきた訳じゃが、その起源はベルギーのレース鳩によるものであると考えられるのう。
遺伝学的に見て、これら諸国の多彩な特色を形作る遺伝因子も、わしらが注意して探索するならば、ベルギーのレース鳩のいずれかにも、必ず存在するものと確信しておるのじゃ。
わしらがそれぞれ、自分の理想とするレース鳩作りを志す場合、その選ぶ道はいずれであっても、すなわちベルギー鳩そのものに改良の因子を求めた場合と近隣諸国のレース鳩に、その特色とする遺伝因子を求めた場合のいずれであっても、わしらの目的達成は不可能と断定できないのじゃ。この点は十分にご承知いただいてもらいたいものじゃ。
●地域で育つ優秀なレース鳩
さらにもう一つ、わしらが忘れてはならないことは、戦前から戦後の半世紀余りにわたって、日本の国内それぞれの地域で立派に育ってきた優秀なレース鳩の系統は、その地域でのレースに最も適応できたレース鳩達であるということを十分に念頭において、これを活用すべきであり、これが基本であると信じていただきたいものじゃ。
そしてその、それぞれの血統の性能を十分に検討され、さらに改良すべき点は何かということをはっきりと認識したうえで、世界の鳩レース界に目を向けて、最良の材料、資質を持ったレース鳩を選ばれることこそ大切であると強調したいのう。
これは、すでに戦前から先進諸国の大家のアドバイスとして、語り継がれた言葉であり、わしらにとっても忘れてはならない教訓といえるじゃろう。
さて、長きにわたって語ってきた「世界の鳩界事情」については、これまでじゃ。随分と長いおつきあいをいただき感謝しておるぞよ。
では次回からは、原点に戻ってレース鳩の作出について改めて考えてみることにするかのう…。
(この項続く)