連載2-40、世界の鳩界事情 その十三

イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ
このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

イギリスという国は、先にも述べた通り、家畜の品種改良にかけては世界第一の業績を持っており、畜産上の品種改良で大きな足跡を残した国じゃ。
わしらがためらいがちである近親交配においても、充分にこれをやり遂げ、それによる好結果を生みだし、また品種の固定にも力を入れてきておる。先に述べたローガン氏の『1826号』も、あえて意識して異母兄弟姉妹配合を実行した結果とかんがえられるじゃろう。
このように、イギリスではかなり激しい近親交配が繰り返され固定化されたレース鳩の系統を種鳩として求めることができたのじゃ。この点はイギリスの鳩を論じる場合、決して忘れてはならない特色じゃった。
しかし、この近親交配によって造成された系統の鳩を種鳩として求める場合、充分に注意しなければならぬことがある。それは近親交配の繰り返しに伴うレース鳩の体質の虚弱化じゃ。
イギリスにあってもずいぶんたくさんの優秀な系統が華やかなレース展開を見せてきたが、それらの系統は10年、20年の歳月を経てから振り返ってみると、全く役に立たない姿に立ち至った系統も実に多い。
岩田系で有名な名古屋の岩田ご兄弟の系統の造成に大きく貢献したエドモンドソン氏のNバーカー系も、岩田氏の鳩舎へ有名な『ノーブルソン号』の直仔『NURP53K4665』(灰胡麻 ♂)という貴重な基礎鳩を提供したのを最後に、虚弱化の一途を辿ってしもうた。これは当時、エドモンド氏が老境だったこともあり、適切な選択と淘汰、またその他の方策がとりえなかった結果ではないかのう?
「レーシング・ピジョン誌」の発行者であった彼の有名なコーリン・オスタン氏の銘鳩『フォアローン・ホープ号』に源を発するビクター・ロビンソン氏のオスマン系も、最終的には近親交配による虚弱化が進み、素晴らしいスピード性を存続することができずに、同氏の死去と共に消え去った感が強いのう。
ビクター・ロビンソン氏と共にイギリス鳩界最大の関心事であるフランス・ポーからのナショナルレースで、常に優位を争っていたノーマンサウスウェル系は、ローガン系を継承する優れた系統であったが、それを受け継いだロン・ミッチーソン氏の鳩舎でも、すでにやはり衰退の兆しが見られたものじゃ。
では次回、さらにレース鳩の系統造成と進展について語るとするかのう…。
(この稿、続く)

 

イギリスの地図

前へ

夏休みの自由研究のテーマ

次へ

2019年春季レジョナルレース 北海道ブロック連盟(2連盟)