連載2-39、世界の鳩界事情 十二
●ローガン鳩舎
ローガン氏の系統は、今日の日本鳩レース界にあっても、悪天候下の長距離レースでは、依然としてなるほどとうなずける好成績の原動力的存在を示している場合が多いので、あえてここで、同氏の種鳩導入方針を述べておくとしようかのう。
ローガン氏はおそらく、当時のイギリス鳩界はもとより、世界の鳩界人として最も巨額の費用を種鳩導入のために使った愛鳩家ではないじゃろうか。
同氏は1878年に当時のジュリオン鳩舎、デルモット鳩舎、ジュール・ヤンセン鳩舎といった鳩舎と優劣を競っておったベルギー第一級のN・パーカー鳩舎の種鳩を全部そっくり買い入れ、さらに当時の西ドイツ・アーヘンの愛鳩家であるJ・ハイツ氏のイタリア・ローマからの超長距離レース優勝鳩の導入をはじめとし、当時のベルギー鳩界のこれと思われる銘鳩を片っ端から買い入れ、種鳩として飼育しておった。
なかでも、有名な話としては、ギッツ鳩舎の2羽の銘鳩を入手するため、イギリスの最も優秀な馬車用の馬2頭との交換を申し出たが断られたというエピソードがある。この話からも同氏がいかに良い種鳩を得るために努力していたかがうかがえるのう。
ローガン氏の代表的な作出鳩は、1921年のサンセバスチャンGN総合8位、翌1922年同レース総合優勝で、キングス・カップに輝いた『1826号』じゃ。
この栗胡麻のメス鳩は銘鳩『103号』(サンセバスチャン1回、ミランダ2回飛翔)の直仔『963号』に、ドクター・ブックレー作出の『676号』とドクター・モーリス作出の『8260号』を交配して生まれた異母弟姉の『1728号』と『1315号』を交配して生まれた近親交配の作出となっておる。
なお、この際の『676号』はグルーター系及びトフト系という比較的、ローガン氏の主流系には関係の遠い系統からなり、『8260号』も『963号』とは血縁の無いスマル系の入った血統であることは、注目すべき点じゃろうのう。
今回、ローガン系についてその成立の一端を述べてきたが、要は当時のイギリス鳩界にあっては、大多数の一流鳩舎はそれぞれに大変な努力を傾けて、ベルギーやフランスの名系の導入に努めておったということじゃ。
では、次回もイギリスのレース鳩について語るとするかのう…。
(この稿、続く)