連載2-38、世界の鳩界事情 十一

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

●イギリス鳩界

イギリスの女王陛下は、ロイヤル・フライング・クラブのパトロンであり、ナショナルレースの優勝鳩には、それぞれの時代の皇帝杯・女王杯が下付されておる。そして王室にも鳩舎があり、立派なレース鳩が飼育管理されておるのじゃ。従って、レース鳩の飼育に関する国民感情も日本のそれとはずいぶんと違うのは当然じゃろう。

さらに、イギリスは家畜の改良において、世界的に見ても実に立派な業績を上げておることも、ご存知の通りじゃ。このような土地柄にあっては、優れたレース鳩の系統が育つのは、むしろ当然といわねばならぬじゃろう。

しかもイギリスは、日本と同様に島国となっておる。鳩レースにおける長距離レースのほとんどは海を越えて帰還せねばならない。日本と事情が異なる点は、イギリスが日本とは反対に大きな海、すなわち大西洋の東岸にあることにより、暖流が打ち寄せていることが挙げられる。

イギリス全土は、緯度からすれば北緯50度から60度に位置しておる。これを日本から見た場合に当てはめると、樺太のサハリン以北に相当するわけで、ずいぶんと寒いはずであるのに、この暖流のおかげで、気候は日本とさほど差を感じられない温和さとなっておる。

しかしながら、それだけにドーバー海峡付近では、霧やモヤが実に発生しやすいのじゃ。となると、この視界不良を突っ切って帰舎することのできる鳩でなければ、立派な成績を収め続けることはできぬ。

イギリスの愛鳩家の中には「イギリスのレース鳩は、その地形的条件からヨーロッパ大陸の鳩とは違う能力を備えているのだ」と胸を張って主張する者がおる。このようなイギリスのレース鳩の貴重な悪天候克服の特性は、もちろんその国土が持つ気象上の条件によるところは大きいじゃろう。しかし同時に、これに対応した愛鳩家達の異常なまでの努力も見逃すわけにはいかんのう。

イギリスでは第一次世界大戦前から、すでにベルギーの優秀な鳩が多数輸入されており、これらの鳩が基礎鳩となって、先に述べた長距離レースが華々しく展開されておった。その中でも有名な実話として、かのローガン氏は、イギリスのレース鳩が渡らなければならないドーバー海峡の霧やモヤを飛び抜けるために、何とかしてこの天候に適応した能力の種鳩を求めるべく、わざわざ悪天候の日のレースに際し、ベルギーまで海を渡り、出向いて好成績で帰還した鳩を、その場で買い求め、持ち帰って繁殖に使ったというエピソードも語り伝えられておる。

もっとも、当時はまだ脚環も一般的にはめられていなかったこともあったらしく、その場で鳩を買って帰らないと、後日にはどの鳩かわからなくなったからだともいわれておるがのう。

では次回、ローガン鳩舎についてもう少し語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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