連載2-36、世界の鳩界事情 九

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

●イギリスの地理的事情

今回はイギリス鳩界についてじゃ。当時のイギリスのレース鳩の飼育熱は、ベルギーやフランス、オランダなどに比べて決して劣るものではないぞ。

イギリスはご存知の通り、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの4つの地域に分かれておることによって、それぞれにナショナルレースがあるが、さらに地方によっては大きな合同レースが実施されておる。

例えば、イングランド北部地方の愛鳩家達は、南部地域の愛鳩家が参加するナショナル・ホーミング・ユニオンの長距離クラッシックレースでは、余りにも距離差があり遠方の鳩舎に振りを招くため、アブノーマ・コンバインレースとしての大合同レースが行われ、一万羽以上参加のレースが行われておる。またマンチェスターを中心とした大合同レースのように、それぞれの愛鳩家集団の大レースが行われてもいるのじゃ。

これらのレースの大部分は、放鳩地がヨーロッパの南東方向、フランスやスペインとなっておるが、従来、スペインの大西洋側の都市であるサンセバスチャンやビルバオからのヨーロッパ大陸の主催レースが地中海側のバルセロナに変更となった軌を一にして、バルセロナのINレースに参加するとともに、単独でも同放鳩地からの最長距離レースが実施されておる。

余談となるが、昔は日本でも海岸線沿いの帰還コースの方が、帰還率などに好結果をもたらすと考えられておった。しかしながら、中部地方の長距離レースで秋田県大館や青森県大畑辺りから、近畿地域でも宮城県若柳からのレースが行われ、海岸線のコースよりも成績が良かったことがあり、この説は一概に正しいとは言えないことが実証されたことがあるのじゃ。理由はいろいろと考えられるが、結論を出すのは難しいところじゃ。これと同様の結果が、イギリスのスペインからの放鳩でも出たということかもしれんのう。

さて、イギリスで北から南へと帰還コースを取るレースといえば、ロンドンを中心としたノースロード・コンバインレースがある。また、スコットランド北端のサーソーからの800K、海を渡りなお北に延びてシェットランド諸島のラーウイックからの1000K、さらに北のファロ―諸島からの超長距離レースも実施されておった。

これはちょうど、わしらが戦後の日本鳩界において、最も遠い場所からの最長距離レースの記録樹立を目指し、成功を収めてきたのと同じように、イギリスでも同じ夢を追い成功してきたのじゃろう。国は違えども、やはり愛鳩家の夢は同じということじゃろうのう…。

では次回も、イギリス鳩界について語るとするかのう…

(この稿、続く)

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