連載2-32、世界の鳩界事情 五

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

今回はわしらの時代、一昔前のベルギーの輸入鳩について、その種鳩としての評価を総括してみようかのう。

わしらは当時、ベルギーこそレース鳩の原産地であり、世界最高水準の優秀なレース鳩が満ち溢れている国じゃと考えておった。しかしながら、これまで述べてきたように、長距離レースに重点を置く我が国では、なかなかうまくいかぬのが現実じゃ。

ベルギーではレースの賞金が非常に大きいため、当地の愛鳩家はレース鳩のスピード性に対して大きな関心を持っておる。さらに中・長距離レースを飛ばしている鳩舎は、鳩の管理テクニックに加え、鳩自身の性能や素質がいかに大きく結果を左右するかを熟知しているため、優れた血統の種鳩を求める熱意は非常に強いものがあるのう。クラッシックレースの優勝鳩の血統を見ると、そのほとんどが「なるほど」とうなずける優秀な血統で構築されておることが多い。すなわちCHになる鳩とは、過去の優秀な血統の積み重ねの上に作出された鳩ということじゃ。これは、どのような小規模鳩舎においても、何らかの優秀な血統が基礎になっていることからも理解できるじゃろう。

ではそれらの血流から、さらに第二、第三の優秀なレース鳩が作出されておるかということじゃが、これは案外と難しいのう。この難関を乗り越えて良い次の世代のCH鳩を作り上げた鳩舎が、その地域の優秀鳩舎として仲間入りを果たすことになるが、成功にいたる多くのケースは、他の有名鳩舎から安定した良血を導入し、その交配によっておる。その場合、1羽ではなく、かなり多くの鳩の導入が試みられておる。ベルギーの鳩のスピード性は世界に冠たるものでるが、その遺伝は簡単に継承できるものでもないのじゃ。また、ベルギーの鳩の飛翔性能についてもう一つ加えるとすれば、1000キロを超えるような超長距離においては世界第一とはいいがたいところがあるのう。また、悪天候を克服する能力も厳しいようじゃ。

しかしながら、悪天候に強い血統という点から考えてみれば、同様なレースに強いと定評があるイギリスのローガン系やN・バーカー系の基礎となった鳩達は皆、ベルギーの鳩なのじゃ。これを鑑みると、ベルギー鳩の系統にも、時代こそ変わっても基質として悪天候に強くスピード性も備えた鳩が必ずいると思われる。その時代にローガン鳩舎が払った苦心を思うならば、今の時代ならば、たくさんそのような系統に巡り合える機会は多いことじゃろう。現在でも、傾向として悪天候に強い系統はスピード性に欠ける点はあるものの、努力して自分の地域や自鳩舎に合った種鳩を見つけて欲しいのう。

では次回は、オランダ鳩界について考察してみるとするかのう…

(この稿、続く)

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