連載2-31、世界の鳩界事情 四

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

おおよそ、日本の鳩レース界では短距離、中距離、長距離という区分を300K、600K辺りを境にして考えられてきておるが、ベルギーでは250K、500Kを境に区分しておるようじゃ。一般的に、最長距離のレースとしてはスペイン・バルセロナからの1000K程度を認め、一時はアリカンテあたりの300Kレースも試みられたようじゃが、しばらくすると中止になってしまっておる。

 ベルギーの愛鳩家としては、フランス・パリまでは短距離、それ以上は中・長距離と受け止めている場合が多く、短・中・長距離の各エースピジョンの選定は、各鳩舎までの実距離によっておる。通常、ドールダン、エタンプ、オルレアンなどは中距離、ビエルゾン、ブールジュ、シャトローなどは長距離に分類されるじゃろう。要は、ベルギーで行われる鳩レースは、フランスやスペインから放鳩されるため、南から北に向かってのコースとなっておる。

そのため、快晴の日のレースでは、多くが高気圧の前半で、北から南に吹く風の中を飛翔する逆風のレースとなるのじゃ。もちろん、その程度は気圧配置によってまちまちではあるが、やはり逆風に強い鳩が有利なレースといえるじゃろう。

ベルギー全体の地形は、サツマイモを横にしたような形じゃ。東部の比較的起伏の多い地域から西部は太平洋に面した平坦な地形となっておる。一見、鳩レースでは平坦な地形の西部が有利であると考えがちじゃが、とある西部地域の愛鳩家によると「レースの日は西風が多く、東に流されるので不利」と主張しておった。とはいえ、ナショナルレースがつつがなく開催されておる所を見ると、実際にはさほど差が無いとは思うがのう。

ベルギーの鳩レースは、日本に比べてギャンブルレースの色彩が強く、賞金を稼ぐ優秀な鳩を失踪の危険がある長距離にはあまり参加させたくないという考えがある一方で、超長距離のINレースで勝ちたいという考え方もあり、自分は長距離一辺倒でやるという愛鳩家も中にはおる。往年のエクストール・ベルレンチ鳩舎、アルベール・ゴーラン鳩舎、レイモンド・コブー鳩舎などがその代表的な例じゃ。

わしが最初にベルギーへ行った1965年頃には、バルセロナレースなど短・中距離で入賞県外でどうにもならない鳩の一か八かのレース参加という感も強かったものじゃが、長距離鳩の血統が普遍化したことで失踪の危険性が少なくなったこと、諸外国からの同レース優勝鳩の高価での購入なども手伝って、多数の長距離指向鳩舎が同レースを最大の目標に数えるよう、変化してきたのも事実じゃ。

ともあれ、ベルギーの長距離レースの代表格は、バルセロナとマルセイユからのINレースであろうのう。

では次回、ベルギーの鳩の種鳩としての評価を考えてみるかのう…。

(この稿、続く)

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