連載2-25、交配について その十三

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

当時のベルギー鳩界のレース鳩に非常に大きな影響を与えた系統として、先のカトリス系と共にステッケルボー系を挙げねばならんじゃろう。

この系統の基礎はラウエーのデルモー系に始まる。私たち日本の愛鳩家にとって非常に興味深い点は、このデルモー系はベルギーの中でも、特に悪天候に強い系統であるといわれていることじゃ。

アロイ・ステッケルボー氏の鳩の大半は、晩年の1946年に売られて分散してしまっておる。その中でも、デスカン・ファンハステン鳩舎、ファンネ鳩舎、ロジェ・フレーカー鳩舎、ボスチン鳩舎、マルセル・デズメ鳩舎、ラビュー鳩舎、ジュール・マトン鳩舎などの成功は、同氏のステッケルボー系によるところが大きいとご承知いただきたい。またこれらの有名鳩舎の中でも、真にステッケルボー系を代表するのは、まずデスカン・ファンハステン鳩舎の「オード・アイザーレン」(54-3037704 DC)を挙げなばならぬ。

この鳩の翔歴は、リモージュN29位、ペグリーIP54位、アンゴーレムIP36位、リボンヌN6位などで、抜群の成績とはいえぬ。しかし血統構成は、父がステッケルボー系で交配された「ワーヌス」(50-3060626 DCW)、母が「ブラウエ・アンゴーレム・ドイピン」(51-3030313 B)。母は「ワーヌス」の全兄弟に「クライネ・ブラウ・ドイピネク」を交配して作出されておる。この「クライネ・ブラウ・ドイピネク」は、ステッケルボー作出の「オードクレヨン」(45-1341318)と「ツワルト・ステッケルボーチェ」(44-486904)で作出されておる。これらからわかることは、いわゆる親仔交配が繰り返されている点じゃ。

この親子交配の方式で作り上げられた「ヨンゲ・アイザーレン」が、60年リボンヌN優勝などの好成績を挙げ、その後、ロジェ・フレーカー鳩舎へとトレードされ、生涯を通じて多数の愛鳩家のCH鳩作出に多大な貢献をしたのじゃ。

このアイザーレンという呼び名は、鉄のような鳩であるという体型から付けられた愛称であるが、ステッケルボー系の鳩達は、実際に際立ってガッチリした体形が見受けられる。例えば、ファンネ氏からこの系統を導入して成功した、オランダのブラックハウス鳩舎の鳩は、同鳩舎の長距離系、ヤン・アールデン系に比べて、画然とした体系の違いがある。ただこの特徴は生後かなりの年月を経てわかることであるため、この系統は若干ながら晩成型であるのかもしれんのう。

さて先に述べた通り、このステッケルボー系の長所は何と言っても悪天候に強いことじゃ。この系統を導入して作られたCH鳩は、長年に渡って数多くのレースを好成績で飛び続けることが可能となり、簡単に失踪することが少ないという利点が見受けられる。しかしながら、なによりもわしは累積された極度の近親交配により、ベルギー鳩界の鳩質向上に大きく貢献したデスカン・ファンハステン鳩舎の作出手法の成果に最も強い感動を覚えたものじゃ。

では次回、ヘクトール・デズメ系について語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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