趣味のピジョンスポーツ 第5回「子供の頃から共にある、鳩はファミリーの一員」伊桜大介鳩舎

 昨今、住環境の問題や鳩レース愛好家の高齢化の影響もあり、自ら鳩レースができず、賛助会員として作ったレース鳩のヒナを預けて、当協会の国際委託鳩舎で手軽に鳩レースを楽しむ方々が増えています。本コーナーでは、委託レースでピジョンライフをエンジョイしている、当協会の賛助会員の方々を、随時ご紹介していきます。今回ご紹介する賛助会員の方は、神奈川県内にお住いの伊桜大介さん(50歳)。昨年の「八郷・国際親善鳩レース大会500K」で、見事に優勝を獲得されました。中学生の頃から鳩を飼い始め、仕事の関係でレースの中断と再開を繰り返しながら、今日までピジョンスポーツから離れずにいた伊桜さん。その委託レースに懸ける思いとは…。

真鶴港から水揚げされる海の幸で有名な神奈川県真鶴町。地図上の形が鶴に似ていることから地名が付けられたという真鶴半島の近くに暮らしているのが、今回ご登場いただく賛助会員の伊桜大介さんです。

伊桜さんのお宅は、坂の上のごく普通の住宅地にあります。取材に訪れた際、「鳩舎を拝見させて頂けますか?」と伺ったところ、案内されたのは普通の一軒家の2階でした。鳩舎は別の場所にあるものと思っていた取材班は内心「???」。しかしながら、拝見して納得、伊桜さんは、なんと自宅の一角のバルコニーを鳩舎として使っていたのです!

「1.2坪のバルコニーに、種鳩を70羽ほど飼っています。天井は2メートル以上ありますが、ちょっと過密ですよね(笑)。油断すると脂粉や羽根が部屋の中に入ってしまうので、部屋との境を厚いカーテンで二重に仕切っているんですよ」(伊桜さん)。

伊桜さんは東京都生まれの埼玉県川越市育ち。幼い頃から動物好きな子供だったそうで、飼育したペットは犬、猫、小鳥、熱帯魚と数知れず。肝心の鳩との出会いは、少年誌で連載されていた漫画『レース鳩0777』がきっかけでした。「中学生の頃、この漫画が流行っており、鳩に興味を持ち、自宅のベランダで飼い始めました。最初の鳩舎は手作りで、使い古しの下駄箱を改造しましたね(笑)」。

鳩を飼い始めたと同時に、日本学生鳩連盟にも加入。1坪の鳩舎をベランダに作り、年に数回、レースも楽しんでいました。高校入学と同時に、日本鳩レース協会の埼玉川越連合会へ入会。いざ大人達との勝負に挑みました。高校を卒業後は、大学入学や仕事などの関係で、今日まで「レース中断」、「レース再開」を繰り返してきたといいます。ちなみに、大学卒業当時の伊桜さんの仕事は、ペットショップの店員さん。動物好きならではの就職先ですね。途中で何度か仕事を変わられたそうですが、鳩に対する情熱は変わることがありませんでした。

「これまで、数年間ほど鳩レースを再開しては、また数年間は中断、といった感じが続いていました。本当はずっとレースを行いたかったのですが、転勤などの関係で仕方がありませんでした。もちろん転勤先は貸家なのですが、新潟県で仕事をしていた時などは、当地で飼育中断された方が鳩舎を貸してくださって、新潟連合会に所属してレースができました。茨城県に転勤した時は、鳩舎を何棟も持っている方に一部を利用させて頂いたこともあります。全て、会員の皆さんに助けて頂いたおかげ。とてもありがたかったですね」。

現在、実家に住まわれて介護職に就いている伊桜さんですが、一昨年に賛助会員として当協会へ数度目の再入会。自宅が住宅地で舎外ができない環境のため、「それならば委託レースを」と考え、国際委託鳩舎でレースを楽しむ道を選ばれました。さて委託歴1年目の昨年、八郷国際鳩舎へ16羽預けましたが、初めての委託ということもあって、さほど期待していなかったそうです。それがなんと、八郷のメインレースである「国際親善鳩レース大会500K」で優勝を果たしてしまいます。

「ちょうどレース当日、仕事が休みだったのでパソコン画面でレース速報の中継を見ていたんです。すると、モニターに自分の名前がポンと出てきました。とにかくビックリしましたね。しばらくして落ち着いてくると、2番手の名前が随分と出てこないぞ、随分とちぎっての優勝だろうな、と冷静な分析ができました(笑)」

優勝鳩の系統は、父方が坂東野州連盟の強豪・吉野ロフトの作出、母方が“ローストデボス”の近親。血統的にはオールラウンドタイプのようですが、その狙いとは…。

「委託1年目ということもあり、オリエンタルカップ700Kまで残ってくれれば良いと考えていました。それが、まさか500Kで優勝するとは…。元々、委託レースに関しては、3年計画を立てていたんです。1年目は700Kまで残る、2年目は入賞、3年目で優勝、それが1年目で目標を達成してしまいました(笑)」

委託レースに挑むに当たっての、伊桜さんの系統に対するこだわりを伺うと、「その時代によって、使っている系統が違います。鳩を始めた当初は在来の“勢山系”を使っていましたね。あとはバラバラなのですが、種鳩の導入は必ず自分の目で見て選ぶようにしています。こだわりは、胸の肉付きや羽根の形ですね。血統的には、横のライン(兄弟)が飛んでいるかに注目しています。配合は『長距離系は長距離系』、『短めの体型は短めの体型』と、同じタイプを掛けるようにしていますね。ちなみに、昨年はモスキート系とエジンバラ系を異血として導入しました」。

種鳩管理においては、太らせないように餌に気を付けているという伊桜さん。鳩をじっくり観察するため、週に5日は鳩舎の清掃を行うそうです。ちなみに、今回の優勝鳩の配合も観察中にひらめいたのだとか。最後に委託鳩舎レースの魅力を伺うと…。

「国際委託鳩舎レースは、全国各地の強豪鳩舎の皆さんと同一条件で戦えるというのが、最大の魅力。思い入れのあるレースは、やはり歴史と伝統のある『国際親善鳩レース大会500K』ですが、次は東日本CHが併催される『国際CH900K』を狙ってみたいですね。今回、優勝したことで欲が出てきました(笑)」。

これからについて、こう抱負を語った伊桜さん。子どもの頃から長年、鳩レースを続けてきた彼にとっては、すでに鳩もファミリーの一員なのかもしれませんね。

種鳩導入では、羽根の形にこだわるとのこと。
住宅2階のバルコニーを鳩舎に改造。1.2坪で高さは2メートルを超える。部屋との仕切りには、分厚い二重のカーテンが!
一般的な住宅地が伊桜さんのお住まい。窓からは真鶴湾が見える。

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