趣味のピジョンスポーツ 第7回「山梨鳩界の希望」小口兼司 鳩舎

鳩レースを行う愛鳩家は中高年の男性が中心ですが、中には女性や若い方々、またご高齢の方、家族で楽しんでいらっしゃる方々もいらっしゃいます。このカテゴリは、鳩レースを楽しむ「ヤング&ウーマン」、「シルバー&ファミリー」の皆さんに、レース鳩の魅力について伺っていきます。さて、作出、飼育管理、春季レース、若鳩の調教、秋季レース、品評会と、1年を通して休む暇の無いのが鳩レース。日々の苦労は愛鳩のレース帰還で報われるとはいえ、IT時代に生まれ育った現代の若者には、なかなか続けられるものではありません。そのような中、帰還率の厳しい山岳地帯で頑張っているのが、小口兼司鳩舎。世代ギャップをものともせず、鳩レースを愛する若きフライヤーです。

昨年のシーズンオフ(15年)、この時期は全国各地で地区品評会が開催されます。なかでも中部ブロック連盟は、過去多数の総合一席鳩舎を輩出するなど、品評会に熱が入っている地域。昨年11月開催の同ブロック品評会において、若干26歳で審査補助の大役を務めたのが、小口兼司鳩舎です。

小口さんは、山梨県在住で山梨地区連盟・山梨第二連合会に所属しています。同地域は、南に富士山、西に南アルプス、北に八ヶ岳、東に奥秩父山地といった山岳地帯に囲まれた盆地となっており、全国的に見ても帰還率が最も厳しい場所の一つ。春季シーズンは猛禽類の被害などで参加羽数が少なくなるため、グランプリ以降のレース開催が厳しくなることも多々あります。この難レースを余儀なくされる地域で、20代の若者が鳩レースを続けるモチベーションは、一体どこにあるのでしょう?

小口さんが鳩レースを始めたきっかけは、お父さんが鳩を飼っていたこと。小口家は男3人兄弟で、小口さんは真ん中です。3歳違いの兄弟達と「鳩レースがやりたい。自分達の鳩舎が欲しい」とおねだりしたのが、小学2年生の時でした。

建ててもらったのは2坪の小さな選手鳩小屋でしたが、幼い兄弟達にとっては宝物。なかでも、一番鳩が大好きだったのが、小口さんでした。最初はお父さんの鳩を飼っていましたが、やがて自分達だけの鳩が欲しくなります。そこで協会のプレゼント鳩コーナーに応募。兄弟で2回当選し、2羽の協会作出鳩を手に入れました。早速、作出してヒナを取ったものの、そのトリは食肉哺乳類の襲撃に…。

子供心に大きなショックを受けましたが、それにめげず鳩飼育を続け、協会制定のジュニア部門の賞で全国優勝も獲得。やがて大人になるにつれ、兄弟は鳩から離れていきましたが、小口さんだけは大学進学で故郷を離れていた数年間を除いて、ずっと鳩と共に暮らしてきました。

現在の職業は、内装設備の設置で夜半の仕事も多いため、不規則な生活になりがちですが、高校生の頃に建て直した各4坪の選手鳩鳩舎、種鳩鳩舎で鳩飼育と鳩レースを楽しんでいます。過去の最高成績は、Rg総合9位、地区N総合11位とのこと。

「毎年の平均作出数は80羽。昨秋は帰還率が良かったのですが、今年は秋の300Kで残念ながら全滅しちゃいました(笑)。仕事で鳩の世話ができない時は、父や妻といった家族が応援してくれますね」と小口さん。地域柄、厳しい飼育環境の中でも鳩飼育を続けられる理由を聞くと…。

「作出もレースも好きなのですが、やはり連盟の仲間の皆さんと切磋琢磨しながら、楽しめるのが最大の魅力。年齢は離れていますが、ファミリーのようにお付き合いさせて頂いています」(小口さん)。

ご自身の父親やお爺ちゃん(失礼!)に近い年齢の仲間達から「ケンジ」、「ケンちゃん」と呼ばれ、親しまれている小口さん。昨年にはレースの審査資格を取得、今後は品評会の公認審査員資格にも挑戦する予定で、鳩レース人口の高齢化が進む中、連盟の強力な戦力となっています。

これからも世代間ギャップを乗り越え、連盟、そして日本鳩レース界の希望として活躍してくれることでしょう。

 

昨年(15年)の中部ブロック品評会で審査員補助を務める小口さん(写真左)。中央は保坂 洋 山梨地区連盟長、右は白山正恵 審査員。

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