趣味のピジョンスポーツ 第23回「猛禽類の影響で、委託レース専門へ切り替え」 高木正一鳩舎

鳩舎前にて、高木正一鳩舎
今回、ご登場いただくのは、栃木県にお住いの高木正一さん(68歳)。少年時代にドバトを飼っていた同鳩舎は、40歳を過ぎた頃、本格的に鳩レースの世界へ入り込んだといいます。連合会員として約10年間、自らの手でレースを行っていましたが、住環境が悪化したため、委託専門でレースを楽しむことを決めたそうです。賛助会員となって5年が過ぎた今年、「八郷国際委託鳩舎シリーズの「オータムカップ200K」と「オリエンタルカップ700K」でベストテン入賞を果たします。そのピジョンライフを覗いてみると…。

「今年、初めて国際委託鳩舎の2レースで、ベストテン内に入賞できました。入賞した2羽は同腹で、同じ賛助会員で鳩友の平野 勇さんが作出してくれたんです。平野さんとはご近所で、連合会時代から賛助会員となった今でも、親しくして頂いています」。

こう話すのは、栃木県内で鳩レースを楽しんでいる高木正一さん(68歳)。同鳩舎は、今年の八郷国際委託鳩舎シリーズで「オータムカップ200K10位」、「オリエンタルカップ700K5位」と、2羽をベストテン内に入れています。

高木さんが初めて鳩と出会ったのは、中学生の頃。当時の鳩ブームに乗り、自宅で数羽を飼っていたといいます。

「当時から鳩レースのことは知っていましたが、レース鳩を飼うほどのめり込んではいませんでした。飼っていたのは、普通のドバト。だから外に放しても、なかなか戻ってこなかったですね。高校生の頃まで飼育していましたが、結局、飽きてやめてしまいました。その頃、たまに失踪したレース鳩が自宅へ迷い込んできたんですが、空に放すと一直線に自鳩舎の方向へ飛んで行っていました。それを見て、やはりレース鳩はすごいなぁと(笑)」。

専門学校を卒業後、大工の見習いとして働きはじめた高木さん。40歳を越えた頃、独立して自営業者となりました。それまで鳩とは無縁の環境でしたが、ひょんなことから鳩レースを始めることになります。

「その頃、学生時代の同級生がいきなり鳩レースを始めたんですよ。それで『一緒にやらないか』と誘われまして。生き物を飼うことは好きだったので、鳩レースにも興味はありました。これといった趣味も持っていなかったので、やってみようかなと」。

そこで、地元の真岡連合会へ入会。仕事柄、鳩舎は見よう見まねで建てることができたそうですが、それ以外の給餌や舎外、訓練などは、全て初めてのことばかり。同じ連合会の仲間にアドバイスをもらいながら、少しずつ鳩飼育や調教を上達させていったといいます。この頃、同じ連合会に所属していた前述の平野さんと知り合ったそうです。

「最初は連合会の仲間から、20羽くらいの種鳩を無償で譲って貰ってスタートしました。当時は舎外で屋根に止まってしまった鳩をどうしたらいいかさえわからず、オロオロ(笑)。苦労しましたよ。平野さんは私より2つ年下でしたが、学生の頃から連合会に入会しており、鳩レースでは大先輩。いろいろ教えて頂きました。後に、平野さんから譲って貰った種鳩のラインで総合優勝も獲得させてもらいましたね」。

連合会時代は東日本CH900Kで連盟優勝、坂東三地区グランプリ800Kでは総合優勝も獲得。「種鳩はほとんど長距離系。体型的には長手の鳩が多かったですね。竜骨が張っていないトリを作出することを心がけていました。ただ関東地域ではスピードがないと勝てないので、ヤンセン系などは導入していました」と高木さん。当時は長距離を得意とするレースマンとして活躍しましたが、6年前にある事情で連合会を退会することになります。

「私の自宅は山間の地域にあるのですが、猛禽類の多発でレースができなくなってしまったんです。なにせ150羽作出しても秋レースを始めるときには50羽以下になってしまうんですから。随分と試行錯誤しながら頑張ってみたんですが、春レースの参加もおぼつかなくなり、これでは自鳩舎でのレースは無理だなと。ただ鳩レースは続けたかった。そこで、委託レース専門の賛助会員へと移行したんです」。

2015年に賛助会員へ移った高木さんは、委託という新たなレースを選択します。ちなみに平野さんも数年前から同じ理由で賛助会員へと移行しており、心強い同志として、お互いに情報交換していたそうです。そして委託専門となって6年目の今年、初めて2羽を国際委託鳩舎レースで上位入賞させることができました。現在、高木さんは連合会時代と賛助会員時代の違いを次のように語ります。

「鳩レースの最大の魅力は、遠い所から自宅まで帰ってくるのを見られること。自分で作出して育てたハトが、大空から羽根をすぼめて、鳩舎へ入っていく姿は最高です。今は委託レース専門なので、その場面が見られないのが残念ですね。正直、猛禽類の被害が無ければ、今でも自分でレースがしたい(笑)。でも委託レースならば、全国レベルの強豪鳩舎の鳩と戦うことができるので、そこが凄く魅力的ですよ。今回は平野さんの作出鳩で上位入賞することができましたが、次は自分自身の作出で優勝したい」。

今後、年齢的な理由、環境的な理由で、自鳩舎ではレースができなくなる方も多くなることと思われます。「これから賛助会員はもっと増えていくでしょう。皆で、国際委託鳩舎の最終レースを目指して頑張りましょう」と、全国の賛助仲間にエールを送る高木さん。これからも良き仲間たちと、素晴らしいピジョンライフを送っていくことでしょう。

鳩友の平野 勇さん(右)と。
自分で建設した9坪の鳩舎

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