趣味のピジョンスポーツ 第10回「幼少期の郷愁から、夫婦で愛鳩家」
鳩レースにおいて、長い歴史と伝統を持つ関西地方。なかでも、強豪鳩舎ひしめくのがニュー近畿地区連盟です。今年、同連盟の春季Rgで、総合2位・総合3位・総合8位と、ベストテン内に3羽入賞を果たしたのが、昨年、当協会へ入会したばかりの村井 清鳩舎。レース歴わずか1年ほどで、これほどの好成績ならば、当然、鳩レースの再開組かと思いきや、なんと全くの″新人さん″なのだそうです。
村井さんのお仕事は、建築関係の自営業。息抜きといえば、近くの川で鮎釣りをするくらいで、これまでは仕事一筋の半生でした。数年前に還暦を迎えたこともあり、仕事を弟さんに任せて、ご自身はセミリタイヤ。自由な時間が増え、もっと熱中できる趣味が欲しいと考えるようになります。その時、頭に浮かんだのが、子供の頃に飼っていた鳩のことでした。
「ふと小学生時分に伝書鳩を飼っていたことを思い出したんです。懐かしい思い出に浸りながら、もう一度、あの頃に戻りたいと、強く願うようになりました」(村井さん)。
とはいえ、鳩レースに関しては、何一つ情報が無い状態。そこで当協会へ電話し、鳩レースのことを詳細に聞いたといいます。
「まず連合会員になること、鳩舎の建築や種鳩の導入、ヒナの作出、脚環の購入など、様々な準備が必要なことを初めて知りました」。
ここからガテン系の仕事で鍛えられた村井さんの行動力が発揮されます。すぐさま、近隣の滋賀連合会を紹介して貰い、会社の事務所の3階に鳩舎を作りました。そして、現在の所属クラプの仲間達から種鳩5ペアとDA環を導入。2015年に約50羽を作出し、翌年の秋からレースに参加。もちろん成績はイマイチでしたが、自分の鳩が帰ってきただけで嬉しかったといいます。
それからというもの、仲間達の指導の下、ひたすら鳩飼育に打ち込む毎日。努力の甲斐あって、今春のRgで見事な華を咲かせます。
「こんなに早く連盟で上位入賞できるなんて、思いもしませんでした。これも全て、連合会の皆さんの協力あってこそ。今、私にとって鳩はかけがえのないものとなっています。あっ一応、家族と仕事の次にということにしておいてください(笑)」。
さて、始まったばかりのビジョンライフを謳歌している村井さんですが、ここで一つ疑間が…。鳩レースには手間も費用も掛かるもの。奥様にご相談はしなかったのでしょうか?
「全て一人で決めました。妻には事後報告ですね。やっと最近、給餌や鳩舎掃除を、進んで手伝ってくれるようになりましたよ(笑)」。
では最後に、奥様の敬子さんへお話を伺ってみましょう。
「主人は事後報告といっていますが、本当はそれもなし。ある日、突然に鳩小屋ができた感じです。最初は、手伝いも頼まれたから仕方なくやっていました。でも毎日、世話していると、鳩達の仕草が可愛くて…。ヒナも私になついて、姿を見ると一斉に鳴き声を上げてくれます。レースで失踪した時は、ちゃんと餌を食べているのかと心配ですね。今では、自分の子供のような感じ。主人より鳩が好きかもしれません(笑)」。
鳩を飼ったことがある人だけにわかる可愛さと儚さ、そしてレースから帰ってくる感激。今、村井夫妻が初めて体験しているこの素晴しいピジョンライフを、一人でも多くの方々に味わってもらいたいものです。