GPSを使って、もっと鳩レースを楽しもう!

鳩レースの世界において謎とされてきたのが、「放鳩地から自鳩舎まで、どのように帰ってくるのか」。これまで、レース鳩が山岳地帯や海上、平地部をいかに飛んでいるかは、推測の域を出ませんでした。しかしながら、科学の進歩と共に、その謎が明らかに!全地球測位システム、いわゆるGPS機器の軽量化により、レース鳩にも装着できるようになりました。最近では低価格化が進み、全国各地の会員の皆さんの中にもGPSを装着した鳩で訓練やレースを行う方々が増えています。そこで今回、GPSを使った新しい鳩レースの楽しみ方を探っていきたいと思います。

GPS機能で、鳩の帰還コースが解明

鳩の帰還コースについては、昔から様々な推測がされてきました。「鳩は海の上を飛ばない」、「山頂の上を飛ぶ」、「いや、そんなに高く飛べないはずだ」などなど…。昨今、科学技術の進歩により、そんな帰還コースに関する数々の謎が解明されようとしています。その技術とは、全地球測位システム、すなわちGPS(グローバル・ポジショニング・システム)です。

GPSとは、アメリカ合衆国によって運営される衛星測位システムのこと。宇宙から衛星の信号を受け取り、地球上の受信者の現在位置を知ることができます。元々、こちらは軍事用のシステムでしたが、民間航空機などの安全な航行のため、民間用途でも使えるように解放されました。最近はスマートフォンなどにも搭載されているので、一般の人々にとっても、ずいぶんとなじみ深いものとなりました。

このGPS機器が小型化・軽量化されたことにより、レース鳩にも装着し、その帰還コースを調べることができるようになっています。数年前からレース鳩専用のGPSリングが販売されていますが、鳩の足に取り付けるリングの重さは、わずか4.5グラム程度。私製環と同じようなもので、飛翔においても違和感や負担を与えないようになっています。位置情報はリングを取り付けた鳩が帰還後、リング内に書き込まれた情報を無料ダウンロードできるソフトウェア「グーグルアース(※注)」で読み取ることにより、飛翔コースがわかります。データからは、帰還コースの各地点における時間、速度、高度、方向などの詳細が明らかになります。

さて気になる価格ですが、リング5個セット(バッテリー及びリングリーダー付)で5万円程度。もちろん、データを読み取るためには、自宅にパソコンも必要。これで、愛鳩の帰還過程が解明されると思えば、安いものですね。ただし、リングを取り付けた鳩が失踪してしまった場合、万事休す…。愛鳩もデータも失ってしまうため、選鳩眼が試されることにもなりそうです。

 
 
GPSリング5個セット。2個セットも販売されている。GPSリングの実物写真。いわゆるパッチンで取り外しが可能。

注=多国籍テクノロジー企業「Google」が、インターネットの利用を前提として開発したバーチャル地球儀システム。クライアント・ソフトウェアは2005年から無料配布(ダウンロード)が開始されている。

GPS活用で様々な謎が判明!?

では、このGPSリングを使うことにより、どのようなことが明らかになるのでしょうか。最近、多くの会員の方が訓練やレースで、このリングを使用していらっしゃいます。

東京都西部にあたる小金井市にお住いの石渡正博さん(多摩中央)も、その1人。東京西地区連盟所属なので、レースは北コースで行っています。データ1は、今年の10月、栃木県小山からの80キロ訓練です。2羽の鳩のデータですが、双方とも他の鳥達よりも遅れて帰還しています。1羽は直線コースから大きく遠回りしての帰還、もう1羽は自鳩舎を通過してUターンしての帰還となっています。遠回りして直線コースから外れたのは、猛禽類に追われたからでしょうか。ちなみに、この時の平均分速は1100m~1400m程度でしたが、方向転換する時には分速1000m程度に落ちていたとのことです。考えながら飛ぶために、スピードが落ちるのかもしれませんね。

データ1(小山市-小金井市・80K)
データ1-2(小山市-小金井市・80K)

次に、西コースでは、神奈川県横浜市にお住いの高山 哲さん(横浜)。神奈川東地区連盟長である同鳩舎も、GPSリングを使用してレースを楽しんでいます。データ2は静岡県牧之原市からの200Kで、2羽の帰還データ。1羽は海岸沿いの陸地を飛んで帰還していますが、もう1羽は海上を飛んで伊豆半島へ渡り、帰還していることがわかります。GPSを使ってみると、それまで高山さんが予想していた帰還コースとは全く違っていたとのこと。通過すると思っていた地点を通っておらず、驚かれたそうです。GPSを使い、鳩の帰還コースがはっきりすることにより、訓練地の選定なども効率よくできますね。また、価格が下がりGPSが普及することによって、鳩レースがさらに面白くなり、会員数を増やす一助になるのではないかともおっしゃっています。

データ2(牧之原-横浜市・200K)。1羽は海岸沿い、もう1羽は海上を飛んでいる。

さて次に、兵庫県神戸市に鳩舎を構える鶴崎捷治さん(豊中)はGPSリングを全国に普及するため、数年前から幾多の訓練・レースにおいてGPSリングを使用し、自鳩舎及び全国各地の使用者から、数々のデータを取得してきました。

例えば、データ3は福井県敦賀市(放鳩地)から神戸市(自鳩舎)まで140キロのデータです。この鳩は放鳩地からまっすぐ飛翔し、琵琶湖西岸付近の海抜1000mの山々の頂上より上を飛んで帰っています。

データ3(敦賀市-神戸市・140K)。帰還はほぼ直線コース。順調な飛翔だったことが伺える。

また、データ4の京都府京都市から神戸市までの68キロ訓練では、放鳩直後は帰還地へまっすぐ飛んでいますが、しばらくして猛禽類の襲撃に遭ったようで逆方向へ逃げており、振り切った後、通常の帰還コースへ戻っています。また宝塚市付近では方向転換し、六甲山の方向へ針路を変更しています。これは、「それまで、何度も六甲山付近から訓練を行っていたから」とのことです。

データ4(京都市-神戸市・68K)。放鳩直後に迷走。猛禽類に襲われたと予測される。

極端なのは、データ5の大阪府茨木市からの訓練。放鳩直後に猛禽類に襲われたのでしょうか。高度900mまで上昇、方向を大きく変えて岸和田市方面まで逃げ、大阪湾を縦断して帰還しています。データ6の連合会レースである入善300Kでは、霊峰・白山の頂上西側を2,300mの高度で飛び、帰還しています。

データ5(茨木市からの訓練)。短い距離だが、大きくコースを外れている。
データ6(入善-神戸市・300K)。高度2,300mで飛翔していることがわかる。

鶴崎さん曰く、多数のデータからわかってきたことは「猛禽類の攻撃は放鳩直後が多い」、「巡航に入れば猛禽類に襲われない。同じ高度で飛ぶ時の速度は鳩の方が猛禽類より速いため、逃げ切れる」、「鳩は海上も平気で飛ぶ」、「2,000m級の山々でも山頂を越えて飛ぶ」、「優秀な鳩は放鳩地から自鳩舎まで、ほぼ直線で帰還する」の5点だそうです。

この他、愛知県名古屋市の永井 鎮さん(東海)からも、新潟県三条市からの300Kレースの2羽の帰還データをいただいています(データ7)。

データ7(三条市-名古屋市・300K)

また、「15年ベルギー王立愛鳩家協会会長賞」受賞の神田亮介鳩舎(鎌ヶ谷中央)や「第28回日本最優秀鳩舎賞」受賞の黒田哲夫鳩舎(上総)といった強豪鳩舎の皆さんも、GPSリングを使用していらっしゃいます。黒田さんは、昨年の春季シーズン終盤から訓練などで20回程度、GPSを使用していますが、一番の驚きは、鳩の方向判定だといいます。それまで鳩は放鳩地から自鳩舎へまっすぐ飛んで帰ると思っていたのが、一旦海岸線へ出てから直角に曲がり、戻ってきたケースもあったそうです。また夜間控除などに関しても、GPSで多くのデータを取ることにより、より正確な控除時間を割り出すことができるのではないかとのこと。

皆さん、ご自身のブログなどでGPSによる帰還データの分析を行っておられますので、詳細はそちらを参考にしてください(データ8)。

データ8。黒田哲夫氏のブログ「上総の空」より抜粋。

さて、使用者の皆さんのご意見を総括すると、様々な帰還データを手に入れることにより、これまで推測の域を出なかった帰還コースの謎が明らかになるのはもちろん、レースにおける戦略、また帰還率向上の手助けにもなるようです。まだGPSリングを使用されていない愛鳩家の皆さんも、この技術を駆使して、鳩レースの新たな楽しみ方を試されてはいかがでしょうか。

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