連載2-23、交配について その十一

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

さて、前回に述べたファンデルエスプト鳩舎に続いて、その時代のベルギーの代表的な鳩舎として、オスカー・デフレンド鳩舎を取り上げなければならん。デフレンド鳩舎の血統は、1926年から58年に渡って作り上げられ、同氏のご子息及びマルセル・モーリス氏の両名によって継承されておる。

デフレンド鳩舎の古い基礎鳩群として、ロジェル・デフレンド氏から受け継がれた1926年生まれの「ゴーデ・モレナーデ号」を筆頭に、テオ・ファンデベルデ氏の「オウデ・ファンデベルデ号」、デピユイ兄弟から受け継いだコミヌ系とシオン系の交配からなる「ウイテイケ号」とファンデベルデ系の「シンジュアー号」、チャールズ・ファンデルエスプト鳩舎からの「カレル号」など、計28羽が挙げられる。なかでも「カレル号」は、父鳩が「シンジュアー号」と「ウイテイケ号」の交配でできた「フイロゾーフ号」にファンデベルデ鳩舎が34年に作出した「オーデ・ウィッペン号」を交配して作られた素晴らしい種鳩じゃ。

デフレンド鳩舎といえば、世界的に有名な「ツワルテバンド号」を思い浮かべるのう。この鳩の血統は、これまで述べた異血交配ではなく、父母共に前述の「シンジュアー号」と「ウイテイケ号」の交配が入っており、近親交配鳩となっておる。

「ツワルテバンド号」の代表的な飛翔成績としては、2位を20分引き離した49年アンゴーレムN1,098羽中優勝、50年シャトローIN・Pro493羽中優勝、51年モントーバンN1,700羽中22位、ダックスN3,098羽中15位、2位を1時間引き離してのサンバンサンN1,096羽中優勝、52年サンセバスチャンN1,500羽中12位、サンバンサンN1,163羽中46位、53年サンセバスチャンN2,583羽中31位などが挙げられる。実に見事なCH鳩といえるじゃろう。

ブッチギリ優勝2回という、この鳩の素晴らしい性能が果たしてどこから生まれたかは、大きな研究課題じゃ。答えのひとつとして、まず血統構成が、その時代の欧州鳩界に君臨する代表的な超一流鳩舎の系統であったことじゃ。これは先のファンデルエスプト鳩舎の場合も同様であったのう。

次に考えられることは、「シンジュアー号」×「ウイテイケ号」の当り配合から作出鳩を巧妙に近親交配している点じゃ。「ウイテイケ号」は父方の4代前と母方の3代、さらに5代前にあって近交されておるなど、優れた血流を近交源としてうまく絡み合わせた結果と推察される。

最後に付け加えなければならぬ点は、ファンデベルデ鳩舎の鳩は悪天候に強い血統であるということじゃ。これは、エミール・デニス氏もお墨付きを与えており、この性能とシオン系、コミヌ系のスピード性がうまくマッチして、この成績が生まれたのではないかのう。やはり、好成績を上げる鳩には、それに見合った理論の裏付けがあるものじゃ。

では次回は、カトリス鳩舎について語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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