連載2-21、交配について その九

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

欧州の一流鳩舎のチャンピオン鳩達の血統を見ると、圧倒的に異血交配が多いことは先にふれたのう。では、はたしてそのCH鳩を産みだした鳩舎において、全ての作出を異血交配にしているかというと、かなりの数の近親交配も行われておる。一般的に見て極端と思われる極めて近縁関係にある雌雄の交配は稀とはいえ、作出される若鳩の過半数は近親交配が占めるはずじゃ。ではなぜ、輝かしい好成績を上げる鳩には、異血交配による作出鳩が圧倒的に多いのじゃろうか。

その原因を考えると、第一には近親交配の結果として避けることのできない強健性の減弱が認められるのう。第二に考えられる点は、体格・体型じゃ。この面においても、やはり弱々しい体格構成の鳩やバランスの崩れた鳩ができやすい。第三には頭脳といった面であるが、この点は神経質な鳩が多く、少しのことに驚いて入舎が悪くなることや舎外失踪が起こりやすいのう。そのため、たくさんの仔鳩を作出しなければならないことになる。

このように、欧州の一流鳩舎でも近親交配の作出とはかくも難しいものじゃ。ゆえに、その最も容易な打開方法として、彼らはより優れた異血血統の導入を試みておる訳じゃ。

ただし、実情としては、異血導入は一流を極めれば極めるほど、なかなかそれを上回る血統は見つけ出すことは難しい。例え、見つけ出すことができたとしてもその入手は極めて困難じゃ。

過日に亡くなられたレオポルド・ボスチン 氏の鳩を例にとって考えてみるならば、彼は実に優れたベルギー鳩界第一流の愛鳩家であったし、同鳩舎の系統は、その後もたくさんの優れた愛鳩家達によって、種鳩として活用されてきておる。

ボスチン鳩舎は代表的なステッケルボード系の継承鳩舎とされておる。同鳩舎は、そこにカトリス系を加えることによって、数々の超一流のCH鳩を始め、たくさんの好レーサー達を作出してきた。これは鳩界史に残る偉業といわねばならぬ。

しかし、わしが1979年に同鳩舎へ種鳩を導入するために訪れた際、どうしても良い仔鳩が見つからなかったのじゃ。同行のエミール・デニス 氏が、後日に責任を持って選鳩してくれることで、不本意ながらボスチン鳩舎を後にした思い出がある。ちなみに、後に同氏が選んで送って下さった鳩の子孫は、総合優勝を果たしておる。

なぜ、ここでこのような話をするかというと、晩年のボスチン鳩舎の鳩達は、先に述べた通り、体質が虚弱化し、体格・体型も弱体化した鳩が非常に多くなっていたと感じたからじゃ。念のために言っておくが、もちろん当時の同鳩舎の鳩の全てが弱体化していた訳ではないぞよ。弱体化していた鳩が多いため、選鳩に困ったということじゃ。

近親交配を繰り返した場合、虚弱な鳩が産まれる可能性が高い。わしらレースマンは、多数の劣等化した鳩群の中からも、優秀な遺伝子を集積した貴重な珠玉ともいうべき、一握りの後継鳩を確実に探し求めねばならぬのじゃ。なかなか難しいことじゃが、これを避けて通る訳にはいかぬからのう。

では次回、ひと昔前のベルギーの有名鳩舎の血統のことを考えていくとするかのう…。

(この稿、続く)

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