連載3-9、日本鳩レース界の歴史

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「日本鳩界の歴史」(81年4月から連載)を引用・改編しています。

レース鳩の前身 その三

さて前回の続きは、武知彦栄著の「伝書鳩の研究」にペルシャ鳩の外形が記されておる話からじゃったかのう。

「くちばしは上下ともに、まっすぐに伸びて長く、硬くて厚い。その長さは約4センチで、紅味を帯びた白色が普通。ただし時に黒色の斑点のあるものもある。鼻コブと眼環の肉質帯は、ともに異常に発達している。頭部は繊麗であるが凹陥を有し、咽喉部は丸く、頸部はかなり長い。翼は非常に長く、尾羽の先端まで伸びている。羽色は、主として黒、minime、および青(灰二引)の3種である。尾羽はすこぶる細く、ことに先端部は非常に貧弱である。胸部は丸くて広い、かつ突出している」

この記述から考えると、今の我々にはくちばしと鼻コブのお化けのように思えるのう。4センチものくちばしの鳩など見たくても見られぬし、頭部の大部分が鼻コブと眼環によって占領された顔は、奇形としか言いようがないじゃろう。

この品種が最盛を極めた1500年代は、この外形が最高の鳩で帰巣能力も最高であったらしいぞ。ペルシャ鳩は、瞬く間に全ヨーロッパに普及し、かなりの期間、好んで飼育されておった。

ヨーロッパの各地では、すでに相当に鳩の改良も進んでおり、多種にわたる鳩が作られておったが、どの鳩もこのペルシャ鳩にかなわなかったようじゃ。

ペルシャ鳩はその名の示す通り、ペルシャ地方で作られたものじゃろう。それが西ヨーロッパに伝わった時「ペルシャ鳩」と呼ばれたに違いないのう。

1573年になると、さらにバクダッドから、オランダ人がはじめて「バガデッテン鳩」を導入して、ハァレムとレイドの両城塞戦に活躍させた旨の記述があるが、このバグダッドからオランダに輸入されたバガデッテン鳩も、ペルシャ鳩から出た変種じゃった。

この他、ペルシャ鳩からできた新しい種類としては、「イングリッシュ・キャリァー」と呼ばれたイギリス鳩が挙げられるぞ。この種はペルシャ鳩の改良型というが、ほとんどペルシャ鳩そのものの形態を有していたようじゃ。

イギリスでは、この血統を継承させて「ドラゴン鳩」を作ったのじゃ。この鳩を伝書鳩として使用した時代が、イギリスではだいぶん長く続いたものじゃ。形態は「イングリッシュ・キャリァー」によく似ておったが、相違点としては、鼻コブと眼環の肉質部分が、著しく縮小したところじゃ。すなわち、ペルシャ鳩から現代のレース鳩の形態に推移していく、中間の体形にあったと思えばよいぞ。

では次回、この続きを語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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