連載3-1、日本鳩レース界の歴史

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「日本鳩界の歴史」(81年4月から連載)を引用・改編しています。

さて、今回からの章では、日本における鳩の歴史を語っていくとするかのう。

四季の変化に富む日本列島に住み慣れてきたわしら日本人は、世界に類をみないほどに繊細で深い情緒を持ち合わせておる。それはやがて、日本特有の美しい文字を作り、趣情あふれる言葉を生み出し、微妙な表現を模索しながら、優雅で心情豊かな伝統ある文化と歴史を築き上げてきたのじゃ。

わしとお主という言葉にしても、英語ならば「アイ」と「ユー」、ほとんどこの二つでことが足りる。日本語ならば、特殊な方言は抜きにしても、僕、俺、われ、手前、私、吾輩、わたくし、君、あなた、おまえ、てめえ、貴様…、挙げればきりがないほどあるのう。これを日本人は、その場その時に応じて、巧みに使い分けておるのじゃ。

ところが、わしらのヒーローというかアイドルというか大好きな「ハト」の場合、一つの呼び名しかないのじゃから、不思議なものよのう。ハトに関しては、江戸時代の末期以降になって、野禽としてのハト、半家禽としてのハトが「鳩」という漢字の文字を使って説明され始めるようになるのじゃが、これは野禽以外の鳩が、日本では飼育されていなかったこと、また仏教の伝来とともに日本にもたらされたと考えられる仏閣のいわゆる「堂バト」が、野禽のハトと何ら区別されることがなかったため、特別な呼び名を与えられなかったと考えるべきじゃろう。日本における家禽としての「ハト」の歴史は、このことが示すように極めて浅いものじゃ。

西アジアに棲息しておったカワラバトの一種であるイワバト(巖鳩)が、有史以前からその地方で人に飼われ、中世以後、ヨーロッパ各地や中国大陸に伝播すると、間もなく、中国語では鳩(野生のもの)と鴿(飼育改良されたもの)、英語ではDove(すべての鳩)とPigeon(飼い鳩)、フランス語ではPigeon(すべての鳩)とColombe(飼い鳩)など、言葉の上で区別がされておった。つまり、レース鳩のルーツはヨーロッパであり、さらに遡れば、西アジアということになるのう。

当然ながら、日本鳩レース界の発展の歴史は、先進の諸外国に負うところが大きく、今回からの稿を進めるにあたっては、これら諸外国からの影響や各国の様々な傾向などの関連が、しばしば述べられなくてはならないじゃろう。

通信・運搬・レースに用いられる鳩が、日本において注目され始めて一世紀半もの時が経ち、軍用鳩、通信鳩、伝書鳩などの呼び名の後、「レース鳩」と呼称されるようになってからは、半世紀近くが経つ。

永いといえば永いが、世界の鳩界から見れば、まだまだ短期間じゃ。しかしながら、日本の鳩の歴史をまとめ上げたものは、発表されたものが少ない。この章では、それらを語りながら、まとめていこうと思うぞ。

では次回、この続きを語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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