連載2-59、種鳩導入を考える その二
さて、当時のベルギー鳩界のスピードバードの在り方に目を向けるならば、わしが何回も述べてきたように、スピード型の短距離鳩が次第にレース距離を伸ばして、中距離でも好成績を上げ、さらに長距離レースにまでその素晴らしい俊速力を発揮して、堂々と好成績を示すようになってきておる。
当時としても当然、考えられる結果ではあったのじゃが、もはや現在では、これは特別変わった考え方ではなくなっておるのう。例えば、マルク・ローセンス系然り、アーレンドンクのヤンセン兄弟然りじゃ。
ここで種鳩導入にあたって、一つ大切なことがあるぞ。導入しようとする鳩舎が、チャンピオン鳩を作出し続けているということで、過ぎ去った過去の輝かしい栄光を追ってはならないということじゃ。10年、20年、30年前に、どれだけ素晴らしい成績を残していたとしても鳩質の退化というものは、びっくりするほど早く起こるものでのう。これは、異血の導入を怠って、近親交配を繰り返した鳩舎には、きわめて起こりやすい現象なのじゃ。
もう一つ大切なことは、目星をつけた鳩舎から種鳩を導入する場合、決して1羽で満足してはならぬ。少なくとも、その鳩舎の代表的なチャンピオン鳩の血統を2羽、3羽と求めたいものじゃ。もちろんこれは、経済的に余裕があればの話じゃが…。
この理由は、1羽の鳩でその素晴らしい鳩舎の全ての特徴を導入することは難しく、また外見だけで1羽の種鳩が良い仔鳩を作出する能力があるかどうかを判断することは至難の業だからじゃ。したがって、2羽または3羽でなければ、本当に良い作出能力を持っている種鳩に当たらない可能性が高いのじゃ。
これと同様に、種鳩を同入賞と目星を付ける鳩舎は2つ、3つに選定するべきじゃのう。1つの鳩舎では、その鳩舎の持つ諸条件と自鳩舎の諸条件がかけ離れている場合、せっかくの良い種鳩でも、十分にその性能を発揮できない場合が考えられるからのう。
鳩レース界の進歩は、実に速やかであるぞ。わしらはいかに優れた好成績を出している時でも、異血などを使い、自鳩舎の鳩質改善や進化を考え、これを実行していかねばならぬのじゃ。
これは「言うは易し、行うは難し」じゃ。下手をすれば、せっかく改良を加え進歩した自鳩舎の鳩質を間違った異血導入で、台無しにしてしまうこともあるからのう。
これに関しては、常に慎重に考え、十分な検討がなされてから、導入に踏み切る必要があるぞ。
では次回も、この件について考察していくとするかのう…。
(この稿、続く)