連載2-17、交配について その五

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

近親交配に対する対称的な交配が異血交配じゃ。これは同系交配に対して、異系交配とも呼ばれておる。レース鳩の場合、通常の異血交配は血統の異なった血縁関係の無いレース鳩の相互交配じゃ。

そこにどのような特徴があるかといえば、最も大きな利点は雑種強勢かのう。生まれたヒナは強健で成長が速く、大きさもしばしば両親を超える場合が多い。これはレース鳩にとっては、非常に都合の良いことである。実際、大レースでの優勝鳩や上位入賞鳩の血統を調べてみると、異血によって成功したと考えられる交配が非常に多いことに気付くじゃろう。

しかし、ここで注意せねばならぬことは、どのような血統でも、異血交配すれば雑種強勢の結果になるとは限らぬことじゃ。相手によっては、逆に劣弱なヒナができてしまうこと、いわゆる雑種弱性になることもあるのじゃ。従って、わしらはどのような系統を交配すれば好結果が生まれるかを、充分に研究せねばならぬ。実際、家畜や家禽などにおいては、この雑種強勢を利用して、発育の速い系統、多産の養鶏を作る配合が作られておる。もちろん、競争動物と畜産動物では隔たりがあることはわかるが、レース鳩の場合も、やはり繁殖計画を考える必要はあるじゃろう。また、この雑種強勢をうまく利用するためには、前回に述べた近親交配をうまく駆使して、血統を育成する必要もあるのじゃ。

もう一つ、異血交配がもたらす大きな利点には、これまでの自鳩舎の血統ではいかに交配を重ねて努力しても獲得することのできない形質や性能を新しく導入できるところじゃ。例えば「これまでの血統では、どうしてもスピード性がいま一つ。あと少しで上位入賞を逃している」といった場合、スピード性のある異血導入が効果的であろう。また、悪天候の展開を克服する能力が劣り、失踪を繰り返している系統に対しても、それは同じである。ここでは問題をわかりやすく説明するため、一つの性能を単一の遺伝因子でできているかのような記述をしたが、これはそう簡単なものではないぞ。多数の遺伝因子の絡み合いでできた形質であることを付記しておかねばのう。

ともあれ、形質改善のためには、異血導入を一つの方法として試みるべきじゃ。ただし、スピード性を増すため、スピード鳩の血統を交配すると、スピード制は改善したものの、今度は悪天候などに脆く失踪してしまう欠点がでてくることもある。これは一例じゃが、なかなかに育種というものは難しいのじゃ。

もう一つ、異血交配の特徴を挙げるとすれば、ヒナの斉一性じゃのう。近親交配の場合はいろいろなタイプのヒナができる可能性が高いが、異血交配の場合、産まれてくる兄弟姉妹はだいたい似たり寄ったりということが多い。となれば、以前に述べた後代検定を行う時、少数の仔鳩のテストで両親の遺伝的な性能を推測することができる訳じゃ。また一方、一つの異血交配の組み合わせで優れたチャンピオン鳩を作出できた場合、これを継続することによって、同様の好成績を残すであろう鳩を多数作出することが可能じゃ。いわゆる「ゴールデンカップル」などと称される有名鳩舎の代表的な種鳩のペアも、このような異血交配によってもたらされていることが多いものじゃ。

では次回、異血交配を積み重ねた場合を考えるとするかのう…。(この稿続く)

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2017年グランプリレース 東海・三重二地区合同