連載2-18、交配について その六
昨今の欧州、日本国内の鳩レース界で活躍している有名鳩舎の主流な血統を見ると、そのチャンピオン鳩のほとんどが、異血交配で作出されていることに気付くじゃろう。
レース鳩として幾多の難レースを克服して立派な成績を収めるには、よほど頑健な鳩でないと、長距離レースを飛びきることはできないものじゃ。長い年月、レース鳩を飼育していると、長距離レースを何年も続けて好記録を量産したチャンピオン鳩達は、実に長寿であり、いつまでも若々しくはつらつとしていることに気付く。また、どんなに飼育条件が悪くても、生きながらえるものじゃ。
このことを見ても、優秀なCHは並外れて健康であり、スタミナに富んだ鳩であることが理解できるのう。ゆえに多少なりとも体質的な虚弱さを持っている近親交配鳩では、CHや長距離レースなどのエースピジョンの座を射止めることはできないのが通常じゃ。
レースの参加回数が重なるほど、これはハッキリとし、この点では持ち前の強権性ということから、異血交配の作出鳩に数段の強みがあるじゃろう。従って欧州では、一般的にチャンピオン鳩の作出に際し、いかに優秀な異血導入を行うかが最大のポイントとなっておる。
この点は日本鳩界でも同じで、異血交配は代々行われており、良い異血導入ができなかった鳩舎は、いつの間にか成績表の上位から姿を消してしまう結果となる。ここが、レース鳩の作出の難しさじゃのう。
この交配に関して、経験的にいえることは、母鳩が健康であることが大切じゃ。若く体型・体格の良い頑強なメス鳩を種鳩として求めることは、経験豊かな愛鳩家の共通した願いでもある。平均的な意見としては、メス種鳩の年齢は5才までとするケースが多いが、本当に優れたメス種鳩は、老齢になってもCH鳩を作出している場合がある。わしはこのようなメス種鳩を自鳩舎に導入したいと考えておるのう。ここでは、メス種鳩の重要性を語ったが、かといってオス種鳩がどうでもよいという訳ではないぞ。遺伝学的に考えるならば、鳥類の場合、性染色体の遺伝はオスからでなければ仔に伝えられないので、こちらも軽々しく考えることはできぬのじゃ。
以上のように異血交配の繰り返しにより、良いレース鳩を作出しようという考え方が浸透しているが、いつも異血が当るとは限らぬ。なかなかうまくいかずとも、多少のことは目をつむってでも、本質的にどの性能が自鳩舎の系統に欠けているのかを充分に承知して、カバーできるような異血を入れたいものじゃ。もちろん、公表されたレース記録などのデータにも注意を払い、新しい血の導入にチャレンジして欲しいのう。何事もそうじゃが、鳩レースにおいて一歩遅れることは、その後に成績に甚だしい差を付けられることになるため、好配合の探索には、ぜひとも血眼になって欲しいものじゃ。
では次回も、異血交配について考えてゆくとするかのう…。
(この稿、続く)