連載2-43、世界の鳩界事情 その十六

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

●ドクター・ハーバード

1967年のアメリカ旅行では、ボストンでハーバード大学医学部の小児科教授を定年退職されたドクター・ハーバードを訪れ、アメリカの長距離鳩のことをいろいろと教えていただいたものじゃった。ドクター・ハーバードは医者という職業を持ちながら鳩好きの一人ということで、アメリカ鳩界きっての有名鳩界人じゃ。
同氏との話は本当に意気相通じて面白いものじゃったが、アメリカで当時の長距離及び超長距離系として信頼のおける系統としては、グルーター系が良いとの推薦じゃった。しかしながら、当時のわしは種鳩鳩舎が満員であったため、残念ながらそのグルーター系をテストするチャンスを掴むことはできずじまいじゃった。しかし、このドクター・ハーバード氏の意見は、将来に向けてアメリカの超長距離鳩を研究される方々には、一つの大切な情報であると思うがのう。
さて、アメリカ東部の諸地方では、単にフォートウェインだけでなくいろいろな地域で1000マイルレースが展開されていたようであり、有名なL・F・カーチス氏の鳩舎でも純シオン系の鳩で1000マイルレースを帰還させておる。とにもかくにも、日本とは全く地形のスケールが違うのじゃ。
アメリカでは愛鳩家は各地に分散しており、なかなかに集まることがむつかしい面がある。かつ公平性を期すため、1鳩舎からの1レース参加鳩数に制限があり、日本のような物量に物をいわせた大量の参加はできない仕組みとなっておる。
そのこともありニューイングランド、ニューヨーク、ピッツバーグなどで大規模なレースが展開されていても、そのほかの地方の愛鳩家たちにとっては、当時の風潮としては超長距離レースでの記録樹立で全米の愛鳩家たちをアッと言わせようといった考え方があったことが推測されるのう。まあこれは日本鳩レース界の創成期の愛鳩家たちの志向にも通じることではあるがのう。
話は変わるが、アメリカの愛鳩家たちの鳩舎は、わしが見学した範疇では一様に小規模なものじゃった。趣味の範囲としては、これが本来のものなのかもしれぬ。当時、人間が鳩レースを仕事以外の余暇に行うと考えると、こうでなければいかぬとも思ったものじゃ。
では次回も、アメリカ鳩界について語るとするかのう…。
(この項続く)

 

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