連載2-41、世界の鳩界事情 その十四

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

前回は近親交配のレース鳩の系統が虚弱化した例をいくつか紹介したが、最近のイギリス鳩が非常に優れた成果を上げた事例としては、スイズ・マザレラ氏の鳩舎で作出されたアルフ・ベーカー系の銘鳩『ウォークマン号』の直仔『NU75LO5904』(♂・母はポーN優勝のシャネル・クイン号)が、ベルギーのファンネ氏の鳩舎で優秀なチャンピオン鳩がしのぎを削る1982年のサンバンサンNレースで、見事優勝を遂げた『ウォークマン・リボンヌ号』を作出した快挙があるのう。
しかし残念ながら、その後はこれに続く好成績は耳にすることはなかったのじゃ。レース鳩の優秀系統の造成とさらなる進展ということは、なかなかにかくして困難なものじゃということが痛感させられる事例じゃのう。
今日、日本鳩レース界では全くといって良いほどイギリスのレース鳩の血統がやかましく言われておらぬ。その理由としては、純系でしかもその優れた能力の低下を来さない、さらに優れたものに向上させて継代してゆくことが非常に困難であったことが一つ。もう一つの問題は、なんといっても体型・体格上からして、イギリスのレース鳩はベルギーなどのレース鳩に比べて、骨格構成の弱さが考えられるのう。
この骨格構成の弱さの結果としては、当然のことではあるが、一般論としてスピード性の面での若干の見劣りを認めざる負えないことじゃ。
遺伝学上の問題として考えるならば、イギリス鳩界で過去の有名鳩舎の多くが選んできたとみなされる閉鎖型の近親交配が世代を重ねていく場合、最も注意しなければならない点は、先にも述べた通り、体質の虚弱化という部分じゃ。そしてもう一つ忘れてならない大切なこととしては、その祖先の持っていた遺伝的形質上に優れた形質は生まれてこないという部分じゃのう。
すなわち、どれほど世代を重ねても、それ以上の物は望みえない、行き詰まりともいうべきものが存在するのじゃ。現に、当時のイギリス鳩界の名士に代表的なイギリスの系統の存在について質問しても、氏自身がベルギーの著名系統を種鳩に選んでいるとの答えじゃった。これは1987年のことじゃがのう。
最後に、わしは日本の国土の置かれている地理的条件を考える時、たとえスピード性については、若干の見劣りがあるにしても、イギリス鳩の悪天候への適応性という何物にも代えがたい長所は、今後とも長く貴重な特性として活用すべきものがあるということも、強調しておきたいのう…。
では次回、アメリカ鳩界について語るとするかのう…。
(この項続く)

 

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