連載2-37、世界の鳩界事情 十

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

●イギリスの鳩レースの歴史

イギリスの鳩レースの歴史は、かなり古いのじゃ。イングリッシュ・キャリアーが今日の世界の鳩レースの祖先の一つになってさえいるともいわれておる。

レース鳩が今日の趣味としての鳩レースの目的として飼育されていただけではなく、船乗りなどの間を始め、多数の実用的な通信用の目的から飼われていたことが、事実としてあることは知っておろう。

四面を海に囲まれた島国のイギリスであれば、それは当然のことであり、ヨーロッパ大陸との間はドーバー海峡を挟んで至近距離であることも併せて考えれば、昔の通信手段としては、非常に大切な役割を果たしていたことは否定できんじゃろう。

前世紀(二十世紀)の初め、第一次世界大戦前じゃが、鳩通信は情報収集の手段として、実に大きい存在であり、軍用動物としての価値も非常に高かったことは、想像に難くないじゃろう。イギリスの愛鳩家達は、そのような意味での国家意識にも燃えて、巨額の金を使ってベルギーはじめ、大陸諸国の優秀血統の導入に努めたとも考えられるのう。

当時の大英帝国の富は、それを敢行できるに足る世界最大のものであったし、わしが調べた第一次世界大戦後から第二次世界大戦に至る資料からしても、この点は強調できるぞ。

第二次世界大戦前、レース鳩の四大分類の一つに、アントワープファミリーとしてアントワープを中心とした愛鳩家達が飼育していたレース鳩達が挙げられる。これらの鳩は、先述のイングリッシュ・キャリアーとの混血とされる共に、それらは当然、イギリスのレース鳩の成立にも大きく貢献しておる。

とにもかくにも、第一次世界大戦前の時代にあっては、ベルギーを中心とするヨーロッパ大陸の真に優れた性能のレース鳩の多数がドーバー海峡を渡ってイギリスへ導入され、今日のイギリス鳩界のレース鳩の基礎をなしたことは、大きな意味を持っておるのじゃ。

では次回も、イギリス鳩界について語るとするかのう…。

(この稿、続く)

イギリスの地図

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