連載2-28、世界の鳩界事情 一

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

世界中で最も鳩レースの盛んな国はどこかといえば、何といってもベルギーを筆頭に挙げねばならぬ。次いで、ベルギーを取り巻く隣接の諸国、すなわちオランダ、フランス、西ドイツ、イギリスなどのヨーロッパ諸国、その次にアメリカ、アフリカ、そして日本、台湾、韓国、中国の東亜諸国、さらには南半球のオーストラリアに至るまで、全世界的に鳩レースは行われてきておる。これらの国々では、それぞれに地形的、気象的な条件や制約により、鳩レースそのものの形態にも相違があるものじゃ。

鳩レースの本場・欧州と日本の一番大きな違いは、欧州(その他の国も)では純粋にスポーツとして鳩レースを楽しむだけではなく、ギャンブルとしての取り組みが強いということじゃ。したがって、大多数の愛鳩家は、長距離レースよりもレース回数の多い短距離レース志向のケースが多いといえる。

これには地形的要素も大きく作用しておる。どこまでも続く大平野が広がるヨーロッパでは、日本のように地形的ハンディで常に上位入賞地域が決まってしまうことはなく、短距離レースが発展しやすい傾向にある。また欧州は非常に天候にも恵まれている。わしが欧州に暮らす人々の生活で驚いたことは、少々の雨が降っても洗濯物を取り込まないということじゃ。というのも、雨が降ってきてもすぐに降り止むため、取り込む必要がないらしい。これほどまでに、向こうの雨は一過性のものが多く、終日降ることは極めて少ない。地形的、気象的に欧州と日本とは大きく違う。ここに欧州から輸入された種鳩の子孫が直ちに通用しない理由があると思うのじゃ。また、日本は太平洋を東にしたアジア大陸の東端に位置しているが、同じく大西洋を東に臨むアメリカの東部(ボストン、フィラデルフィア、ボルチモア)などの土地で好成績を残した系統は、オペル系、ゴードン系を筆頭に、日本でも悪天候に強い系統として有名じゃ。

しかし、これらの国々と日本とのレース展開は大きく違う。欧州では大平野を飛んでいるのに対して、例えば標高3000m級の連山を越えねばならぬ日本の近畿地方のレースを比べると、その難易度は比べ物にならない。では、欧州において困難な山越えレースにどのようなものがあるかといえば、代表的なものではドイツ南西部のアルプス越えレースやアメリカのロッキー山脈越えレースが考えられる。このようなコースで鍛えられた系統が日本でなかなかの好成績を示しておる。

これらの系統は、最初からその地形条件に適合した鳩であったかというと、それほど簡単なものではない。皆、その地の先輩たちが苦労して築きあげた系統の賜物であろう。わしが、このようなことを述べているのは、レース鳩の育種は地域の特性を備えた種鳩を活用することによって、早期に自分の望む系統的特徴を完備した銘系を作り上げることが可能であると知って頂きたいからじゃ。

「育種とは寄木細工のようなものだ」と、かつて鶏の多産系卵用種の系統を作り出したブリーダーは述べておった。ここまで、その寄木細工の材料をどこに求めたら良いかを述べてきたのじゃ。レース鳩には、様々に具備して頂きたい特性があるからのう。

では次回、もう少し地形と天候のことについて、語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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