連載2-27、交配について 十五
―デズメット・マタイス系―。
一昔前のベルギー鳩界のチャンピオン鳩達の血統を調べていくと、このデズメット・マタイス系がかなりのケースで目に留まるのう。デズメット・マタイス鳩舎の基礎鳩といえば、有名な「クラーレン」(46-3060539 BC ♂)じゃ。
この鳩は47年から52年の6年間に好成績を残しており、非常に賢く健康で長寿じゃった。ファーレル・デズメット氏は、たいへん優れた選鳩眼を備えており、バルゲルヘークのフェルストラーテ氏、オスカー・デフレンド氏、ヘクトール・デズメ氏、ロジェ・フレーカー氏といったベルギー鳩界でも第一流の鳩舎から種鳩の導入を行い、その系統を作り上げてきておった。ちなみに、デズメット・マタイス系の特徴は、何といっても短距離から長距離に渡り素晴らしい飛翔成績を残すオールラウンド型であるということじゃ。
同系統には、「クラーレン」と並ぶ好種鳩に「カポン」(60-4033246 BC ♂)がいるが、その両親は「クラーレン」の流れを組んでいる。また、その他の優れたCH鳩の血統を見ても、祖先に「クラーレン」の血流が含まれている点に、わしは非常な興味と感銘を覚えるのじゃ。要は、デズメット・マタイス系の交配で注目すべき点は、この非常に優れたCH鳩「クラーレン」を基礎鳩に、当時のベルギー鳩界の一流の系統を巧みにブレンドし、世代を経て「クラーレン」の血流を相互に交配することで、「クラーレン」の優秀性の再現を試みているところじゃ。これもまた、一つの系統造成の方法であると思うのじゃ。もちろん「クラーレン」が稀代の好種鳩であった事実も忘れてはならぬがのう。
―モーリス・デルバール系―。
1950年代当時、わしらはベルギー鳩界第一の銘系は、デルバール系だとの情報を得ておった。その頃、世界の愛鳩家は競ってデルバール系を導入することに努めていたものじゃ。実際、オランダの長距離CH鳩たちの血統をさかのぼると、祖先にモーリス・デルバール鳩舎の作出鳩を見出すケースが多い。1930年代から40年代、また第二次世界大戦後のベルギー鳩界にあっても、デルバール系の鳩は、天下無敵ともいえる素晴らしい活躍を遂げておる。
近代のデルバール系の名種鳩としては、「バロン」(52-4116487 BC ♂)が挙げられる。1954年から56年にわたり、ナショナルレースで好飛翔をコンスタントに示した銘鳩であるが、この鳩は38年サンバンサンN優勝2回、39年サンバンサンIN4位などの好成績を挙げた「クライネン・ゲシュルプテ」(32-4293562 BC ♂)の近親交配じゃ。また、この「バロン」の姉妹鳩は、ジルベル・ファンデンウェーゲン鳩舎で、バンリール系のCH鳩との交配で「カンピオン」(59-4504597)を作出。「カンピオン」は、62年マルセイユIN36位、カオールN28位、バルセロナIN4位、63年バルセロナIN82位、64年バルセロナIN340位、65年バルセロナIN14位、マルセイユIN7位という素晴らしい成績を上げておる。このトリは、A・シモンズ氏とJ・デミュレメースター氏の手に渡って、同鳩舎の一連のCH鳩を作出する基礎種鳩となっておる。
以前に紹介したデズメ系の「プリンス」、またその直仔「ウィットペン」の場合も然りであるが、わしらは重ねて近親交配系の種鳩の遺伝力の強さを、強く認識させられるケースじゃのう。
では次回、一昔前の世界各地の鳩界事情を語るとするかのう…。
(この稿、続く)