連載2-12、巣立ちの時期と管理

このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。(イラスト著作/無料イラスト素材 はちドットビズ)

ヒナの巣立ち時期についての考え方は、人によってまちまちじゃが、孵化後25日程度が一般的じゃろう。確かに、それ以後に親鳩と一緒にしておくと、ヒナに餌をやり続け、いつまでも自立の気配がなく、親仔共に栄養不足をおこしてしまうものじゃ。

逆に、孵化後25日より前に巣立ちさせる方もいるが、やはりこれは巣立ちの理想的な日数とは言い難いのう。なぜなら、巣立ち前のヒナを育てておる親鳩は非常に塩分を欲しがる。そのため、塩土や牡蠣殻などの鉱物飼料をむさぼるように食べるが、これはヒナの骨格形成を完全にすることをはじめ、発育を順調にするために非常に大きな役割を果たしているといえるのじゃ。しかし、早めに巣立ちさせられたヒナは、直ちに餌を食べることが不十分で、ましてや鉱物飼料の捕食を行うことは、なかなかままならぬじゃろう。そこで、ヒナの体格が、ある程度出来上がるのを待って巣立ちさせるべきという考えとなり、その時期は孵化後25日が妥当という訳じゃ。

さて巣立ちの時の管理方法じゃが、これはいろいろな方策が考えられるが、わしはヒナに対するしつけは非常に大切じゃと思うのう。「三つ子の魂百まで」といわれるが、鳩も同じじゃ。巣立ち直後のヒナに教えなければならないことは実に多い。この時期を失しては、取り返しのつかないこともたくさんあるのじゃ。

まずは、餌に対する好き嫌いをなくすことかのう。鳩も人と同じで決して偏食の習慣をつけてはならないのじゃ。野菜好きの子供が健康に育つように、鳩が将来的に嫌いになるじゃろう大麦などをヒナの時に食べさせれば、生涯、健康に活躍することが出来ると思うのう。人の場合も同じじゃが、健康で長い年月に渡って好成績でレースを飛び続け、繁殖でも良い仔鳩を生み育てることができる原動力は、全て〝食〟が基本なのじゃ。昔から人が健康で長寿を保つためには何を食べたら良いかという研究がなされておるが、わしは、鳩においても非常に大切であると思うの。

次に教育するのは、飼い主との親和じゃ。巣立ち後の餌をただ漫然とやるような状態にしておくと、餌は自然に鳩舎の床から出てくるものと思い込み、飼い主は鳩を掴まえてひどい目にあわすだけと刷り込まれ、全く親和が取れなくなるのじゃ。ある程度育った後で飼い主との親和を図っても、なかなか成果はあがらない。巣立ち時に根気よくやれば、飼い主に馴れきった状態を作ることができるのじゃ。これは、後に持ち寄り時などで掴まえる時に、鳩に恐怖心をおこさせる心配もなく入舎も順調にいくなど、レース時に非常に役立つのじゃよ。

最後に心掛けることは、輸送のための籠やケージの空間に慣れさせることかのう。レース距離が長くなれば、放鳩地での宿泊もあるが、その時にケージに慣れておけば、餌も水も平気で飲食できる。特に水を飲める、飲めないでは鳩のコンディションが全く違ってくるのじゃ。長距離を目指すならば、この教育も巣立ち時に必ず実行したいものじゃ。

では次回からは、交配について語るとするかのう。     (この稿続く)

前へ

連載2-11、最良のヒナの生まれ月

次へ

連載2-13、交配について その一