趣味のピジョンスポーツ 第10回「ベランダ鳩舎で、ささやかに鳩飼育」 和田英幸鳩舎

19年八郷オリエンタルカップ700Kの帰還鳩(第148位)を手にする和田さん
今回ご紹介する賛助会員の方は、長野県内にお住いの和田英幸鳩舎(62歳)。和田さんは昨年の「伊賀オータムカップ200K第4位」に入賞し、国際委託鳩舎レースで初めてのベストテン入りを果たしました。40代中盤から50代初めまで地元の連合会に所属し、鳩飼育に邁進していた同鳩舎は、中断を経て、現在は賛助会員として委託レースを楽しんでいます。そのピジョンライフとは…。

「ベランダ鳩舎で、飼育羽数は種鳩10羽ほど。連合会員時代は、自宅の庭に鳩舎を建てて多数の鳩を飼っていたんですけどね。今は、ささやかに鳩飼育を楽しんでいます」。

昨年の「伊賀オータムカップ200K第4位」に入賞した和田英幸さん(62歳)は、自宅2階にあるご自身の鳩舎を振り返り、こう話します。

現在、長野県で士業を営む同鳩舎が、鳩との関りを持ったのは中学生の時。前回の東京五輪の鳩ブームはピークを過ぎていましたが、まだまだ鳩レース熱が盛んな70年代のことです。近所の鳩屋さんからレース鳩を飼ってリンゴ箱鳩舎で飼育していたそうですが、その鳩飼育はわずか数か月で終わりを迎えてしまいます。

「当時は鳩のことを何も知らなくて。飼育さえすれば、空に放しても勝手に鳩舎に戻ってくると思っていたんですね。もちろん、馴致もしていない成鳩なので、そのままいなくなってしまったんですよ。それにガッカリして、鳩を飼うのをあきらめちゃいました(笑)」(和田さん)。

和田さんが、次にレース鳩と出会うのは45歳の頃。それまで草野球や登山といったスポーツを趣味にされていたそうですが、事業も軌道に乗り、自分の時間が多く取れるようになったことを機に、新たな趣味を持ちたいと考えたことがきっかけでした。何気なくインターネットを検索している時、鳩レースのサイトを見つけ「面白そうだな」と感じたそうです。

詳しく調べてみると、鳩レースを行うには、まず国内に2つある協会のどちらかへ入らなければならないとわかり、当協会へ問い合わせ。自宅近くの連合会を紹介してもらい、長野連盟の信州連合会へ入会します。

鳩舎や種鳩はネットオークションで購入。その後、連合会の仲間から地元の飛び筋を譲ってもらい、1.5坪の鳩舎で初めての鳩レースを楽しんでいました。しかし数年後、とある事情で鳩飼育の中断を余儀なくされます。

「勢い込んでレース鳩を飼い始めたんですが、馴致や舎外でうまく鳩を鳩舎に呼び込めず、近所の家の屋根に止まっちゃって。近くの畑の作物をついばんでしまうこともありました。ご近所付き合いは良好だったので、さほど問題になりませんでしたが、年々苦情が増えてきたんです。自分の調教が下手だったのが原因なのですが、なかなか上達しなくて…。住宅街ですし、ご近所に迷惑をかけるのも忍びなく、仕方なく鳩飼育を諦めました」。

連合会員時代は秋季400Kで連合会優勝の経験もあったそうですが、50歳の頃、やむなく飼育を中断。再開は2017年、還暦を迎える手前のことでした。鳩レースのことが忘れられず、再びインターネットで検索していた時、賛助会員というシステムを知ったのです。

「賛助会員ならば、舎外や馴致も必要ないし、少羽数飼育でご近所に迷惑をかけることもない。委託レースだけですが、これなら鳩レースができるなと。連合会員時代は、このシステムを知らなかったんですよ。もっと早く知っておけば良かった(笑)」。

しかし再開するにも、種鳩はもちろん、鳩舎や鳩具も鳩友に譲っていたため、改めて準備が必要です。前回の経験を踏まえ、自宅2Fのベランダに数個の小さな手作り鳩舎を作成。種鳩は、地元の鳩業者から購入しました。

連合会時代の経験から「投薬は少なめ、清潔が第一」と鳩舎掃除をマメに行い、作出したヒナに1週間は小粒を中心に与え、その後、委託鳩舎に行ってもすぐに餌が食べられるようにと、大粒中心に変更。ちなみに作出の配合式は「地元の飛び筋に、ヨングシャンテリー系を異血で」が基本とのこと。

このように、愛情を持って育てたヒナ達を八郷・伊賀の両国際委託鳩舎に預けた同鳩舎は、再開2年目の昨秋、「伊賀オータムカップ200K第4位」と、初めてベストテン内に入賞します。

「自分が国際委託鳩舎レースで上位入賞できるなんて、夢にも思っていませんでした。そのため、これまではレース速報もほとんど見たことがなくて。この結果も『レース鳩誌』のアンケート依頼が来て、初めて知ったほどです(笑)。委託レースの醍醐味は、自分の配合の組み合わせが全国レベルでどこまで通用するか、ということにつきます。今後の目標は北海道を放鳩地とした1000Kレースを帰すこと。順位は二の次、とにかく委託した全鳩が帰還して欲しいですね」。

現在、ご自身の馴致テクニックも鍛えられてきて、ヒナの段階から種鳩に決めたトリの舎外や50キロ訓練も行っているという同鳩舎ですが、賛助会員ならではの悩みもあるようで…。

「やはり、国際委託鳩舎までのヒナの輸送が厳しいですね。私の住んでいる地域(長野県)にある輸送業者の事業所では、鳩を取り扱ってくれないんですよ。そのため毎年、自宅から50キロほど離れた新潟県上越市の事業所まで足を運んでいます。委託の締め切りが迫ると、八郷鳩舎(茨城県)や伊賀鳩舎(三重県)まで直接持っていくこともしばしば。輸送中のヒナ鳩のコンデイションも心配ですし、何とかならないものかと…。まあ、全国各地の賛助会員さんにも同じ境遇の方がたくさんいらっしゃると思いますが、皆さん、共に頑張りましょう!」(和田さん)。

最後に、全国の賛助会員の仲間たちにエールを送った和田さん。住宅環境に負けず鳩飼育を続けるバイタリティと、ご近所への気配りや給餌・輸送といった愛鳩を気遣うその優しさが、とても印象的な愛鳩家でした。

小規模鳩舎で鳩飼育
毎年、各国際委託鳩舎へ10羽程度ずつ委託

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神経症の治療に鳩飼育