趣味のピジョンスポーツ 第6回「委託とオープンレース、ダブルでエンジョイ!」 久保田 隆鳩舎

「2016年度 伊賀・広島平和祈念300K」第8位に入賞した久保田さん。
 昨今、住環境の問題や鳩レース愛好家の高齢化の影響もあり、自ら鳩レースができず、賛助会員として作ったレース鳩のヒナを預けて、当協会の国際委託鳩舎で手軽に鳩レースを楽しむ方々が増えています。本コーナーでは、委託レースでピジョンライフをエンジョイしている、当協会の賛助会員の方々を、随時ご紹介していきます。今回ご紹介する賛助会員の方は、山梨県内にお住いの久保田 隆さん(53歳)。昨秋の「16年度 伊賀・広島平和祈念300Kレース」で、第8位に入賞されました。15年前、鳩レースを一度中断した久保田さんは、ひょんなことがきっかけで、委託レースの楽しさを覚えることになります…。

「レース鳩の脚環が欲しくて、協会の賛助会員になりました。国際委託鳩舎のことは知っていましたが、自分が委託レースをやるなんて、その時は頭になかったですね」。

山梨県内で造園業を営む久保田 隆さんは、約3年前に賛助会員として、日本鳩レース協会へ入会した理由をこう話します。脚環とは、レース鳩の個体証明である足に付ける“輪っか”のこと。これが無ければ、レース鳩としては登録することができません。

久保田さんの鳩との出会いは、20代半ば頃。先代から家業の造園業を引き継いだ久保田さんは、ある日、自宅の庭に迷い込んだ一羽の鳩を発見します。早速、その鳩を保護したところ、たまたま訪れた奥様のお父さんから、「これはレース鳩だ。せっかくだから鳩レースをやってみないか」と誘われました。

実は義理のお父さん、地元では強豪として知られた愛鳩家。あれよあれよという間に、レース用の鳩小屋作りから血統の良いレース鳩集めまで、鳩レースを始める準備が整っていきます。そして27歳の頃、地元の山梨地区連盟・山梨第三連合会へ連合会員として入会。本格的に鳩レースの世界へ飛び込みました。

「いざ始めてみると、鳩レースは本当に面白かったですね。やはり自分で作り上げた鳩が帰ってくる姿を見ると、何ともいえず感動します。山梨県はなかなかレース鳩が帰りづらい環境ですが、当時は桜花賞900K総合4位を獲得したこともありますよ」(久保田さん)。

しかしながら、家業の経営が多忙となった上、野球をしていた小学生の息子さんのお世話もあり、レース鳩の調教ができなくなって、やむなく36歳の時に鳩レースを中断。ただ、鳩達にはそのまま自宅の鳩小屋で餌と水をやり、繁殖しながら飼っていました。

すっかり鳩レースから離れて、ペットとして鳩を飼っていた久保田さん。15年後のある日、自宅へ訪れたレース鳩を知っている方が、久保田さんの鳩を見ながら、こう漏らしたことが復帰するきっかけでした。

「このレース鳩、脚環が入っていませんね…」。

この何気ない一言に、久保田さんは大きなショックを受けます。ペットとして飼っているとはいえ、アスリートであるレース鳩。個体証明である脚環が入っていないということは、その辺りにいる普通のドバトと変わらないのではないか…。そこで、脚環を手に入れるため、すぐさま賛助会員として再入会。50歳の時でした。

「生まれてくるヒナに脚環を入れてやり、レース鳩として育ててやりたかったんです。そのためだけに再入会しました。その時は、賛助会員になれば委託レースに参加できることを知らなかったんですよ。連合会員だった頃は、自分で管理や調教をするのが鳩レースの醍醐味だと思っていたので、ヒナ鳩を預ける委託レースに興味がありませんでした」。

とはいえ、レース鳩はレースに参加してこそ、その真価を発揮するもの。そこで早速、委託レースを楽しもうと2羽を申し込みました。元々、血統は地元の飛び筋や平田ゴードン系、岩田系のトリを使っており、その系統が鳩小屋には残っているはずでしたが、長年入出舎口を開け放して放置していたため、ドバトも紛れ込んでいるような状態。とてもではありませんが、結果がついてきません。

そこでまず、投薬で健康状態を整えた後、いきなり長野県から120キロの訓練を行い、鳩舎に戻ってきた鳩を種鳩として残しました。また、新たに種鳩を導入しようと考えましたが、15年間も鳩レースの世界と離れていたため、現在、どのような血統が飛んでいるのか、さっぱりわかりません。その時は、雑誌やインターネットで鳩の血統を調べて導入したそうです。

「基本、両親がレースで成績を上げている鳩を導入しました。とにかく、結果を残しているラインならば飛んでくれるだろうと思って…。系統にはこだわらなかったですね」。

そして委託歴2年目の秋、いきなり結果が出ます。『2016年度 伊賀・広島平和祈念300K』で、第8位に入賞したのです。

「当日、インターネットのレース速報を鳩友と見ていました。いきなりベストテン内に入賞ですから、嬉しいというよりもビックリしたというのが本音。ただ、結果がついてきたことで、俄然、鳩レースをやる気になりました」。

現在、久保田さんは、神奈川県、東海地方、山梨県といった各地域の会員有志が行っている「秋季 新潟オープンレース」にも参加。種鳩はもちろん、ドローンを使いながら舎外などの選手鳩の調教も行い、16年には同オープンレースで、ベストテンに3羽(総合3位・4位・7位)を入賞させました。さて、最後に久保田さんに鳩レースの魅力を伺うと…。

「国際委託鳩舎レースのインターネット速報で、自分が作り上げたトリが帰ってくるのを確認するのが楽しみ。また同一の飼育管理条件で、全国の強豪鳩舎と戦えることを考えるとワクワクします。最近は、昔取った杵柄ではありませんが、選手鳩の調教も再開し、オープンレースに参加する喜びも増えました。昔の鳩友との交流も増えましたし、今は鳩に夢中です!」

 委託レース、オープンレースと、ダブルで鳩レースをエンジョイしている久保田さん。50代からまだまだ長い人生、レース鳩達がさらなる彩りを添えてくれることでしょう。

自宅敷地内に2鳩舎を構える。こちらは種鳩鳩舎。
こちらが選手鳩鳩舎。
選手鳩の舎外運動には、ドローンを使用!

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