趣味のピジョンスポーツ 第21回「夢は八郷国際CH優勝、鳩友の快挙を目指して」 藤屋雅久鳩舎

21年度八郷オータムカップ200K第2位鳩を手にする藤屋さん。
今回、ご登場いただくのは、埼玉県にお住いの藤屋雅久さん(66歳)。中学生の時から20代半ばまで鳩レースを楽しんでいた同鳩舎ですが、その後は40年以上も中断。彼に鳩への情熱を再び蘇らせたのは、かつての鳩友が成し遂げた大きな偉業でした。自身も賛助会員として再開後、わずか3年にして伊賀国際委託鳩舎で「協会賞全国1位」を獲得するなど、素晴らしい成果を上げました。今後、藤屋さんが目指す鳩レースの夢、そして目標とは…。

「委託レースで鳩飼育を再開したのは、5年前。きっかけは、インターネットで昔の鳩友の活躍を知ったことです」。

こう話すのは、埼玉県で乗馬クラブを経営する藤屋雅久さん(66歳)。再開わずか3年目の19年度伊賀国際委託鳩舎シリーズで、オリエンタルカップ700K優勝&アベレージ協会賞を受賞という好成績を上げました。半世紀近くも鳩レースから離れていたという同鳩舎が、この素晴らしい成績を残せた要因は、どこにあったのでしょうか。

東京都出身の藤屋さんが、鳩を飼い始めたのは小学2年生の時。大学生の従兄が鳩レースを行っており、「自分も飼ってみたい」と思ったそうです。そこで4羽を譲って貰い、鳩飼育を開始。翌年には当時の大東京連合会へ入会し、レースに参加したといいます。

「初レースはたしか東京五輪の年(64年)、秋の100Kだったと思います。思い出に残っているのは、2戦目の秋200Kですね。天候が悪くて連合会全体の帰還が悪いなか、帰ってきたんですよ。この時は嬉しかったなぁ」(藤屋さん)。

しかし中学校に進学後、都心に暮らしていたため、近隣からの苦情で鳩飼育の中断を余儀なくされます。再開は2年後、15歳の時に父親の仕事の関係で神奈川県横須賀市へ引っ越ししたことから、鳩飼育が可能になりました。高校一年生で、京浜横須賀連合会へ入会。再びレースへ熱中する日々が始まりました。

「この頃の思い出は、高校3年生の時に初めて東日本チャンピオン1000Kレースを帰したこと。2羽参加で、翌夕に1羽が帰還しました。その日の昼間、鳩友の菱沼泰雄くん(年齢は一つ違い。現在、三浦半島連合会所属)から、『うちは来たよ』と連絡があったので、『ならば自分も』と思って、ずっと空を眺めていました。初めて長距離を帰せたので、感動しましたね。当時、菱沼くんとは、記録時計の貸し借りをするほどの仲でした」。

しかし受験、大学進学、父親が経営する会社へ就職と、人生の転機を迎えて藤屋さんの鳩レースに対する情熱は、徐々に色あせていきます。そして24歳の時、家庭の事情により、都内でマンション住まいとなり、再び鳩飼育を断念することになります。

「飼える環境ではなくなったので、菱沼くんや連合会の皆さんに鳩を引き取って貰いました。鳩を飼うことは好きだったんですけど、仕方ありませんね」。

以来、鳩から離れてしまった藤屋さん。再び運命の邂逅を果たすのは、なんと60歳を過ぎた頃。インターネットで見た、ある記事がきっかけでした。

50歳を越えた頃から、インターネットの普及で様々な情報が入るようになり、好きだった鳩のブログを見ていたんですよ。すると、高校生時代の鳩友だった菱沼くんが、東日本CHレースで総合優勝したというニュースが目に飛び込んできました(2015年)。ビックリしたと同時に嬉しかったし、感激しましたね。憧れの東日本CHで自分の鳩友が、しかも距離ハンディのある神奈川県から38年振りの総合優勝ですから。一言、おめでとうと言いたくて、思わず30年振りに電話をかけてしまいました(笑)」。

菱沼さんに連絡したところ、旧知の仲だけあってすぐに意気投合。「久しぶりに会おう」という話になりました。もちろん、共通の話題は鳩談議。すると20代の頃、自身が預けた鳩の筋(ヴァンリール系)を、菱沼さんが大事に残してくれていたことを知ります。「レースに使い、結果も出してくれており、本当に感激しました」と藤屋さん。学生時代からの鳩友の友情、そして彼が達成した大きな快挙を目の当たりにして、一気に少年の頃の鳩レース熱が戻ってきます。

「もう一度鳩が飼いたい。その気持ちがどんどん強くなり、すぐ自宅のベランダで4羽を飼い始めました。菱沼くんも協力してくれて、ありがたいことに東日本CH総合優勝鳩の直仔と全兄弟を種鳩として譲ってくれたんです。自身もネットで研究して、マルセリスやリーンブアといった系統を導入しました」。

鳩飼育の再開は62歳。前回の中断から、なんと半世紀近くの時が経っていました。その後、17年に賛助会員として再入会、国際委託鳩舎への初委託は18年度レースから。初年度はレースにたどり着けなかったといいますが、その翌年、19年度の伊賀国際委託鳩舎シリーズで、奇跡の快進撃を続けます。

プレレースの「オータムカップ200K」で第8位と初のベストテン入賞を果たすと、「国際ダービー400K29位」、「国際親善鳩レース大会600K9位」、そして最終戦である「オリエンタルカップ700K」で見事に優勝を飾り、ファイナルレース優勝&3レースのアベレージである「協会賞全国1位」獲得というダブル制覇を果たしたのです。

「再開してすぐだから、正直、実感がなかったですね。700Kで初優勝した時も『あれ、勝っちゃったよ』といった感じ(笑)。でも後々、再開に尽力してくれた菱沼くんや飼育してくれた伊賀スタッフの皆さんに、感謝の気持ちが湧いてきました」。

昨秋、八郷国際委託鳩舎において「オータムカップ200K2位」の成績を上げ、両国際委託鳩舎を通じて4度目のベストテン入りと、活躍を続けています。再開早々、伊賀鳩舎において「賛助会員の夢」である快挙を成し遂げた同鳩舎に、これからの目標を伺うと…。

「やはり、『八郷国際CH900K』の優勝。八郷と伊賀、両国際委託鳩舎の最終レースを制してみたいですね。菱沼君の東日本CH総合優勝鳩の筋を使っていますから、決して夢物語ではないと思っています。今後も作出を勉強しながら、頑張りたいです」。

昔日の鳩友との交流、鳩飼育の復活、委託レースでの朗報…。藤屋さんが手にした『ピジョンドリーム』は、新たな目標と共に、これからも続いていくことでしょう。

藤屋さんの仕事は、埼玉県内にある乗馬クラブの経営。
昔日の鳩友である菱沼泰雄さん(三浦半島連合会)と。

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