連載2-67、デ・スカイマーカー氏との会見 その一

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

ご承知の通り、デ・スカイマーカー氏はベルギー最大を誇るナチュラル社の創設者であり、レース面でも同氏の一族の飼育鳩からは、1シーズンにナショナルレース2回優勝という見事な成績の鳩が出ておる。

198322日、わしはかねてから訪問を約束しておった通り、ナチュラル社の門をくぐった。

かつて日本で同氏のご子息とはお目にかかっており、顔なじみではあったが、デ・スカイマーカー氏とお目にかかるのは、その日が初めてじゃった。

同氏は当時、すでに会社の業務の第一線からは退いておられる様子であったが、ことレース鳩の飼育に関しては、まだまだ現役で取り組んでおられ、意気盛んであった。何より感心したのは、わしをまず種鳩鳩舎に案内して、いろいろと自分の鳩についての説明をしてくれたことじゃ。また、当時のベルギーの鳩界人としては旧い知識人で、わしらがその昔に文献で覚えた有名鳩界人のことなどが、次々と話に出てきてのう。

改めて考えてみると、どうもベルギーでの鳩レースは、第2次世界大戦以前はかなりの上流階級の趣味であったようで、当時の古老の愛鳩家たちにとっては、ベルギーの協会を動かすようになった新しい世代との仲は、しっくりいかないものもあるように見受けられたものじゃ。

これはどの国の鳩界でも大同小異であろうし、時には、こうした古老たちの不満が火を噴くことも考えられるのう。わしは、このような政治的な意味での鳩界の話はあまり興味がなかったため、この時は、努めて訪問の主題、すなわちレース鳩の飼料の方向へ、話を進めるよう話題を選んだ記憶があるぞ。

デ・スカイマーカー氏の基本姿勢には、何といっても自然な形でレース鳩を飼う方向でなければならないという強い主張が貫かれておった。

これはベルギーという国の人々の自然な考え方がその主導となっておるようで、科学的、栄養学的にものを見て考えていこうとするやり方よりも、むしろ「すべては鳩に聞け」という取り組みであったのう。

なるほど、わしらはややもすれば、運動の激しい時にはたんぱく質に富んだ豆類を多量に与え、また脂肪分の多い資料も併せて与えるべきだと考えるものじゃが、デ・スカイマーカー氏の方針は、「すべてを鳩に聞け」という考えを徹底しておった。

まあ、いろいろと机の上で考えるのではなく、やはり大方針はいつの時代もこれでなければならないと、わしも全く同感ではあるのじゃがのう。

おっと、頁がなくなってきたわい。では次回、この続きを語るとするかのう…。

(この稿、続く)

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