連載2-63、レース鳩の飼料 その二

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このコーナーは、会員の方からの寄稿や過去に掲載された本誌の記事を元に、伝書鳩及び鳩レースの今昔を鳩仙人の語り口で掲載します。本稿は本誌で連載された「レース鳩作出余話」(83年〜87年連載)を引用・改編しています。

第2次世界大戦前の日本鳩界の飼料について

戦前の日本において、レース鳩は今のように普及しておらず、国内の鳩界の人々による諸外国との直接の往来もなかったのじゃ。従って、レース鳩の飼料として、混合飼料が売り出されるということは夢のような話で、各個人が数種類の飼料を混合して与えておるような状況でのう。その主な品種は、白エンドウとトウモロコシで、さらに麻の実や小麦、玄米が追加される程度じゃった。

ところが、レース鳩の飼育が盛んじゃった京阪神地方の多数の古い愛鳩家たちは当時、非常に安価で入手できた中国の東北地方(当時の満州)産の麻の実を主体に、一割程度の玄米を加えたものを使っていたのじゃ。当時の長距離レースを成功させたのも、このような配合飼料によっていたところが大きい。例えば、大正13年の春、仙台―京都間600キロレースで、2羽の当日帰還鳩が記録されておる。

レース鳩の飼料に関する当時の文献は、レース鳩そのものが軍用の資源として陸軍によって輸入され、民間に頒布された関係上、軍用動物としての文献が原著で、それが骨子となって、市販の著書にも紹介されておった。

そのような関係から、大正8年にフランスから軍事顧問として陸軍通信学校に招聘されたクレルカン教官の方針によって、配合されたものが主体となっておったと考えられるのじゃ。

「陸軍軍用鳩通信教程」や「軍用動物学(鳩ノ部)」、そして海軍の武智彦栄大尉の著書である「伝書鳩の研究」が、当時もっとも当を得た記述であったと記憶しておるが、わしの手元には残念ながら、「陸軍軍用鳩通信教程」は残っておらぬ。そこで、「軍用動物学(鳩ノ部)」と「伝書鳩の研究」の中から、飼料とその配合を拾ってみるかのう。

当時の飼料の品種

それぞれの著書では、飼料の品種としては、まず白エンドウをあげ、「たんぱく質の補給源として欠くべからざるもの」としておる。

白エンドウの代用としては、ソラマメ、白大豆は使用できるのじゃが、青豆や黒豆、小豆(あずき)などは鳩が好まないし、これらを使うと下痢を起こすなど健康を害し、仔鳩の成長を妨害すると記されておる。

次に、トウモロコシは「炭水化物の代表的な飼料として常用するもの」とされ、小粒のものを良品、馬歯形の大粒のものは不適としておる。この代用としては、キビや高梁といったものが挙げられておるのう。

おっと、今回はこのあたりまでじゃ。ではこの続きは、次回に譲るとするかのう…。

(この稿、続く)

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